カープ劇的優勝を支えた「老スカウト」の眼力 71歳の裏方は「将来の活躍」をこう見抜く

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また、ドラフトは「情報戦」でもある。会議当日が近づいてくると、ドラフト戦線ではさまざまな情報が錯綜する。特にスカウト陣が神経質になるのは「あの球団はあの選手を●位で狙っている」という他球団の指名情報だ。前述したように2011年に菊池を2位指名しているが、全国的には無名な身長171センチの内野手を上位指名するには、よほどの確信がなければ難しいだろう。

具体的な情報収集方法は企業秘密のため明かせないが、苑田スカウトは「菊池の時は、担当の松本(有史)スカウトがギリギリまで調査した努力が実りました」と打ち明けてくれた。同様に2012年2位の鈴木も尾形佳紀スカウトが密着マークし、上位指名に成功している。2013年3位の田中に至っては、苑田スカウトは「高校1年から見ているけど、外れ1位で消えていると思っていた。まさか3位まで残っているとは信じられなかった」というほど好評価していたという。

こうしてスカウト陣の尽力もあり、好素材が次々に入団。もくろみどおりプロ入り後に大きく成長したことで、カープの陣容が整っていったのだ。

スカウト陣にご褒美は

ところで、首脳陣や選手たちは優勝すると「優勝旅行」に出かけるが、スカウト陣にはそんなご褒美があるのだろうか? そう聞くと、苑田スカウトは意外なエピソードを教えてくれた。

「昔、古葉(竹識)さんが監督だった時に優勝して、先代のオーナー(松田耕平氏)が『スカウトたちも優勝旅行に行ってこい!』と言ってくれたんです。でも、僕らスカウトにとっては、その時期は指名後のあいさつやら来年への準備やらで忙しい時期で……。しまいにはオーナーから『お前たち、行く気あるのか?』と怒られてね(笑)。最終的に『中止や』ということになって、その年以来、何もありません」

今年の優勝が決まった当日も、選手たちがビールかけに興じる一方で、スカウト陣はそれぞれの自宅や出張先のホテルでささやかな祝杯をあげるだけ。苑田スカウトはさも当然という風情で「それが自分たちの仕事ですから」と言った。

最近、苑田スカウトは若いスカウトに対して必ず言うことがあるという。それは、「これはと思った選手は、行かんと獲れんぞ!」ということだ。

「以前にウチでスカウトをしていた、宮本(洋二郎)さんは前田健太(現ドジャース)を1位指名した年に、いつもPL学園に通っていました。もちろん、行けば獲れる確証は何もありません。それでも、一生懸命にやっとったら『何か』がある。だから、これはと思う選手がいたら、必ず通うようにしているんです」

25年ぶりに奪還したチャンピオンフラッグ。スカウト陣が「何か」を起こし続けたからこその必然の結果でもある。

菊地 高弘 編集・ライター

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きくち たかひろ / Takahiro Kikuchi

1982年生まれ。雑誌『野球太郎』(廣済堂出版)の編集部員を経て、2015年4月よりフリーの編集兼ライターに。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書に、あるある本の元祖『野球部あるある』(「菊地選手」名義/漫画 クロマツテツロウ氏、新装版が集英社から発売中)がある。Twitterアカウント:@kikuchiplayer

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