こうして、パソコン、朗読、ピアノ、歴史、掃除など、実にさまざまなジャンルのプロたちが集まりました。面白いのは、その各々の講座を「学科」に見立てて、施設全体を「わたしの家大学」としたことです。
従って、ボランティアの方の肩書は「特任教授」です。通ってこられるお年寄りに、自らの経験、知識を無償で授業する訳です(但し、交通費として5百円をお支払いしているとのこと)。
介護施設は生涯の学びの場である
わたしの家大学には、18学科・60講座があります。たとえば体育学科はウォーキング、リハビリ体操、音楽・映像学科はハーモニカやピアノ、唄、大正琴、脳育学科は脳トレ、パソコン、早口言葉などの講座に分かれています。しかし、なぜわざわざ「大学」なんでしょうか。
谷口社長はその疑問にこう答えてくれました。
「介護施設に来られるといっても、皆さん、人生の先達たちです。そこが、世間でよく言われる『チイチイパッパを歌わされる幼稚園』では失礼だと思うんです。尊厳やプライドの持てない場所にしたくない。小学校でも中学校でもない、ましてや幼稚園でもない。大学という『学びの学舎』にしました。学生である利用者さんの、生涯学びたい、という熱い思いに応える、自ら創る大学なのです」
学生さんはけっこう忙しくされています。登校、チャイムで授業開始。朝礼、校歌斉唱、スローガンの唱和で1日の授業が始まります。コミュニケーション学科(自己紹介)、創作学科(生け花、習字、絵画、工作、折り紙等)、健康衛生学科(健康教室、ヨガ教室、口腔体操、換気タイム、手洗い、うがい、トイレなど)、食エコ学科(公園の清掃)などを受講します。変わったところでは、阪神タイガースを勉強(?)する「阪神講座」というクラブ活動もあるとか。また食育学科には、昼食タイム、おやつタイムもあります。各自、希望の講座を選択し、1日の最後に何を学んだかを確認して終礼、そして下校という段取りです。
授業を受けると単位がもらえ、毎年3月の進級式には修了証授与を行い、4回生、大学院へと進級します。開所してすでに8年。当初から通っている利用者は大学院の上級生になりました。これからどこに進級してもらうか、それが悩みの種、と谷口社長は笑われます。
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