会計士のスキルが活きるキャリアとは? 【キャリア相談 Vol.9】

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事業会社のCFOやベンチャー企業のアドバイザーを目指すのであれば、企業の事業環境を理解したうえで、将来予測と自社の戦略を事業計画に落とし込まねばなりません。すなわち、定性的な戦略をモデルのアサンプション(前提条件)として咀嚼し、リアリティのある数値として落とし込むという行為です。これができるためには、会計ではなくビジネスに対する強い関心と洞察力が必要となってきます。若手会計士の方の取っ掛かりとしては、ビジネスケースや戦略論の本、日経新聞「私の履歴書」、ドラッカーといった、定性的ですが現実のビジネスの息遣いがわかるような書物に触れるといいと思います。

ライブドアのCFO(財務責任者)は税理士だった

若手会計士は人間が行う「経営」というもの意識することがキャリアを開く道です。この「経営」を会計知識をつかって数字に落とし込むのです。これは企業を評価するデューデリジェンスでも、社内の管理を行い外部のステークホルダーとコミュニケーションするCFOでもファイナンス(資金調達)のアドバイスを行うバンカーでも、アウトプットは違えど使っている能力の基本は同じものです。

質問者の方は、資格だけでは安泰ではないという不安をお持ちかと思いますが、ベースとなるもの(資格)を使いながら、自分なりに差別化できるものをつくるべきです。学び続けることさえ忘れなければ自分のコモディティ化は防げます。かつてのライブドアで堀江社長を支え、会社を成長させたのはCFOで税理士だった宮内さんでした。

宮内さんは堀江さんの湧き出るアイデアをビジネスに変えるセンス、そしてそのアグレッシブな経営スタイルにおいて際立っていましたが、非常に細かい会計知識を持つところに有無を言わさぬすごみがありました。やはり基盤となる人に負けないハードスキルは重要です。

ビジネスに対する洞察力とすごみのある実務能力があれば、周りの資格保有者を引き離すのは難しくないことでしょう。公認会計士が増えたとはいえ、私の知るかぎり、まだまだ企業経営にインパクトを与えられるようなプロフェッショナルは少ないと思います。

最近では士業の方がインターネットで自分のマーケティングをすることも増えてきましたが、そうした人たちの中でも、同業者から見て本当に実務能力のある人は少ないようです。質問者の方が監査業務以外のキャリアをお考えであれば、ぜひとも日々、経営、そしてそれを行う人間の行動原理を学んで、「売れる」プロフェッショナルになっていただきたいと思います。

※ 塩野さんへのキャリア相談はこちら

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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