会計士には草食系が多い
財務会計ワールドにおいて、公認会計士にとって近くて遠い存在に投資銀行のバンカーがいます。会計士がリスクをとって監査報告書にサインをする一方で、M&Aのトランザクションを行ったら後は知りませんというバンカーが日本においてはそれほど訴訟リスクを負わずに高額のボーナスをもらうのは解せないものがあることでしょう。
資格をつかった専門職、特に公認会計士のキャリアを考えるにあたって重要なコンセプトに、「周りが草食動物で自分だけ肉食動物だと食べ放題」というものがあります。一般的に学生の頃からしっかりと資格の勉強をして会計士になった人たちは、まじめで比較的草食系の方が多い気がします。
たとえば法曹界の人間のほうが攻撃的で野心家も多いものです。会計士出身の政治家はなかなかいません。そうした草食系の会計士が監査業務以外のスキルセットを身に付けて、実力を伴ったうえで自身のマーケティングを行うと、実はピン芸人としての仕事はたくさんあります。これは周りが草食動物であるがゆえに、ちょっと肉食化すると世の中は食べ物が多いという話です。
監査業務を行っていた会計士が、財務会計という基盤を生かしながら、キャリアを発展させると、職業としてはM&Aアドバイザーや投資銀行・証券会社で企業の資金調達を行うバンカー、事業会社のCFO、ベンチャー企業向けのコンサルタント、上場準備コンサルタントなどがあり、もっと特化するとデリバティブやクロスボーダーの会計や税制の専門家などがあります。会計士は登録をすれば税理士になれますので、英語にアレルギーがなければクロスボーダー案件や海外ファンド管理について税務業務を突き詰めていくと差別化が可能です。
気をつけないといけない点は、監査業務だけで30代に入ってしまうと、なかなかほかのスキルをつける機会がなくなってしまうことです。具体的にはバリュエーション(企業価値評価)やモデリング、資本市場の知識やM&Aのトランザクションといったスキルと経験です。
たとえばバリュエーションをするためには事業計画が必要で、事業計画とはモデリングです。会計士の中には自分はただの計算機で、事業計画はクライアントが作ったものを免責事項だらけにして使用して企業価値算定書を作ればよいと考える人もいますが、それでは付加価値はありません。また万が一、その企業価値算定書に従って買収価額を決定し、トランザクションを行った企業が株主といったステークホルダーから訴訟を受けた場合に、あまりに算定書が杜撰だと法廷で耐えることができません。
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