生命保険は、あまりにも「手数料」が高すぎる 1万円入金すると3000円も引かれてしまう!

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言うまでもなく、保険で用意できるのはおカネです。おカネ(死亡保険金・入院給付金など)を用意するためには、おカネ(保険料)を払う必要があります。そして、不幸が起こった人やその家族に届けられるおカネは、保険料から保険会社の諸経費が引かれた残りのおカネなのです。

したがって、加入者側からおカネの「全体の流れ」を見ると、保険会社が計算間違いでもしないかぎり、原則的には「諸経費の分は収支がマイナスになる仕組み」を利用することになるわけです。そうであれば、徹底的に利用するより、限定的に利用するほうが望ましいはずです。

保険は会社にとってもある種の賭けなのか?

「そんなことを言って、明日からでも長期間、入院することになったらどうするのだ? 何はともあれ保険に入っておいたほうが安心だろう」と考える向きには、視点を保険会社側に移してみることをおすすめします。

実際、私は、保険会社のリスク管理に関わっている人に「今日、保険に入った人が、明日亡くなることもあるかもしれない、加入後まもなく寝たきりになる人だっているかもしれない。そんなことを想像すると、保険は会社にとってもある種の賭けですね」と尋ねたことがあります。

返ってきたのは「『大数(たいすう)の法則』という便利なものがあります」という一言でした。仮にサイコロを数回振って、1の目ばかり出た場合「これは特別なサイコロなのではないか」と感じられるかもしれないが、回数を増やしていくと1が出るのは6回に1回程度になる。保険も同じで、加入者がたくさん集まるとインパクトが大きな事例も確率に収束される、ということなのです。

この回答にはストーリーの影がまったくありません。あるのは確率論に裏打ちされたおカネの収支見込でしょう。

そもそも保険料は、あらかじめ入院給付金などを支払う確率を高めに見込んで設定してあります。さらに本稿の最初のほうで触れたように、保険会社の運営費に要する諸経費も見込みで含まれています。

結果、医療保険の場合、加入者に給付金として還元されるおカネの割合が70%程度と見られるのです。私は何度でも「1万円入金すると3000円が引かれるATM機」のことを想像してみたいと思います。入院などでおカネの不安があるときに役に立つ、といったストーリーから離れてみると「ずいぶん大胆な課金システム」に見えてくるからです。おカネの心配をしたくない人が、自己資金の3割が減る仕組みを安心のために利用することが不思議に感じられます。

「そういう問題ではない。突然、長期間入院することになった人にとっては、確率100%の事実だ」と言う人もいます。そのとおりだと思います。さまざまな事実や体験を否定するつもりはありません。ただ、切実な体験談などに接すると心が揺れます。だからこそ、一歩引いたところから「どのような仕組みなのか」とおカネの流れを知っておく必要を感じます。少なくとも私は、心が揺れている状態で、おカネの問題について正しく判断する自信がないからです。

巷間、不幸のストーリーが絡む情報は、保険会社や代理店などがたくさん発信しています。しかし、私は主に確率や保険会社の運営に使われる諸経費の面からの情報を発信しています。「落ち着いて保険のことを考える人が増えると、商品やサービスが向上する」と信じるからです。

後田さんが「生命保険」をさまざまな角度から解説する連載を、この秋から開始する予定です。お楽しみに!

 

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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