女性が陥りがちな「遠回りの罠」 「総合職だけどいい人」を目指した、三菱商事時代
「嫌われたくない病」と「承認欲求病」を発症
今にして思えば、「同期の中で最初に昇進して、椅子にひじ掛けが付いたからといって、それがいったい何なんだ?」とも思います。今なら第1回で述べたように、女性が出世したほうがいい理由についても自分なりに考えがあるのですが、当時は周囲の勢いに完全に巻き込まれていただけでした。
この時代の私の「遠回りの罠」は、自分が女性だと意識しすぎるあまりに陥る「自滅型」の罠です。「嫌われたくない病」や「承認欲求病」を発症し、とにかく体力の限りを尽くして全方位に「いい人」「すごい人」と思われたいがために、「あれもこれも」やってしまう。しかも過剰にゲームのルールに適応していることや、非効率な働き方で疲弊していることに気づいてすらいない、という状態です。たまたま体力があったからこそ、潰れなかったものの、かなり危うい状態だったのではないかと思います。
今、私がこの時代の私のメンターだったら、「あなたの成功の定義は何なのか」と、何度も問うのではないかと思います。同期トップで出世すること、同僚の女性たちに「総合職だけれどいい人」と思われること、それのどちらを選択するのか。2つの選択肢ともが、本当は手段であり目的ではないのではないか……。もっとも、そう問われても近視眼的だった私には、答えは出なかったかもしれないのですが、少なくともそういう質問が意味ある質問であることは、理解できたのではないかと思います。
自分が何者なのか、圧倒的にわかっていなかったのがこの時代の私。このあとハーバードに留学することが、自分の仕事に対する価値観の大きな転機になるとは、まだ自分でも予想していませんでした。
(構成:長山清子、撮影:今井康一)
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