女性が陥りがちな「遠回りの罠」

「総合職だけどいい人」を目指した、三菱商事時代

お読みいただいておわかりのとおり、三菱商事時代の私は、「自分が女性だ」ということを強烈に意識していたように思います。25年前は特に、どこに行っても女一人ということが多かった。同期の研修でもそうだし、他社とのミーティングに行っても、若くてしかも女というだけで圧倒的に少数派。

こんなふうに紅一点として「目立つ」「注目を浴びる」ことに居心地の悪さを覚える方もいるかもしれませんが、これは裏返せば、連載第3回で述べた「おやじネットワーク」に入り込むチャンスでもあります。

現に米国企業の投資家説明会などで、怖いもの知らずだった私が、「ご質問は?」と聞かれて「はい」と手を挙げて英語で質問したりすると、「あの女、何者?」という感じで会場がザワザワし始めます。でもよい質問をすると、その後の懇親会などで、その経営者と同じテーブルでご一緒させていただけたりするのです。当時の三菱銀行の頭取から「キミは元気がいいね」と声をかけていただき、それを上司に報告したら「えっ、口きいたの?」と驚かれたこともあります。

ですから女性だからといって損だと思ったことは、本当にないのです。そういった意味では、本当に恵まれていたし、いま思えば多くのことから守っていただいていたのでしょうが、その環境に感謝すらできていなかったのではないかと思います。

「女性初の社長になりたい」と思っていた

ただ、時代も時代ですので、驚くような体験をすることも多々ありました。

たとえば出張に行くと、「新人で出張に来ている女子」なんていまだかつて見たことがないおじさまに、「キミのバックグラウンドは何かね?」と聞かれて、質問の意図がすぐにのみ込めなかったことがありました。たぶんそれは「新人で、しかも女性のあなたがこの場に来たのは、何かスペシャルなものを持っているからでしょう。それは何ですか」と聞きたかったのでしょう。そう言われても、「そんなものは何もございません」という感じなのですが(笑)。

当時は「だから女はダメなんだ」と言われるのが嫌で、できるかぎりの努力をしようと思っていました。私は基本的にすごく負けず嫌いだし、空気を読んで合わせすぎる過剰適応型の人間なので、出世レースのようにゲームのルールがあるところに行くと、ルールに自分を合わせに行ってしまう。

上司に「チークダンスを踊れ」と言われれば踊るし、タクシーをつかまえろと言われれば寒空の中で何十分も立っている。正直に言うと「女性初の社長になりたい」とすら思っていたくらいです。だからこそ、同期の中で最初に昇進するためにはどうすればよいかと、真剣に考えていたようなところがありました。

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