女性が陥りがちな「遠回りの罠」 「総合職だけどいい人」を目指した、三菱商事時代

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なぜ私が採用されたのか実際のところはわかりませんが、私は「かなり生意気で風変わりだったから」ではないかと思っています。「結婚しても仕事を続けますか」との質問に、「それ、男性にも質問していますか。ちなみに私は定年まで働きます」と断言するような怖いもの知らずな感じでした。

「私を採ったらオトク」的な購買支援の発想で自分の強みを整理して伝える訓練を、マスコミ受験対策のゼミで2年間たたき込まれたことも、役に立ったのではないかとは思います。が、かなりビッグマウスぎみだったことは確かなので、そんな私にポテンシャルを感じてくださった採用担当の方々にひたすら感謝しています。

ファックスで辞表まがいの泣き言……

入社して配属されたのは企業情報部というM&Aのセクションです。当時はわかっていませんでしたが、これはとんでもなく幸運なことでした。この部署はその年にできたばかりで、リベラルな部長の下に全社からMBAホルダーが集められた部署だったのです。会社側も「女性総合職を採ったからには、わかりやすい専門性をつけさせよう」と思っていたのでしょう。

時は、日経平均が最高値をつけた年、バブル真っただ中。巨額のLBO資金を融資する案件に携わったり、数々のVCファンドに投資したり、ロンドンやニューヨークの金融子会社に長期出張させていただいたりと、いま考えるとすばらしいチャンスを与えられていたのですが、若かった私には、そのありがたさがよくわかっていなかったのです。

むしろ、ちょっと仕事で壁にぶつかると、「そもそも入社2〜3年目でこんな責任の重い仕事をしている人はいないのに、私だけ難しいことをやらされすぎじゃない?」みたいに思うことも。その頃まだメールはなかったので、ファックスで辞表まがいの泣き言を書いて送りつけたり、上司に向かって、「みんなの前でしからないでください」と言ったこともありました。思い出すだけで顔から火が出そうになります。

その部署には同年代の同僚がおらず、いちばん年の近い先輩でも10歳くらい離れていました(だからこそ私にもチャンスが回ってきたのですが)。その先輩たちに比べると、とにかく自分は圧倒的に仕事ができないことをひしひしと感じる。でも、どこを埋めればその差が縮まるのかがわからない。総合職で入社したという妙なプライドばかりが先行していて、「さすがに仕事ができるね」と言われたい承認欲求の塊のような感じで、「できない」とも「わからない」とも言い出せず、知識やスキルの欠如を長時間労働で埋め合わせる、といった仕事の仕方をしていました。

いま考えれば、生産性が恐ろしく低く非効率だったと思います。一方で、以前の連載にも書かせていただいたとおり、女性特有の「みんなから好かれたい病」で葛藤していた時期でもありました。

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