やわらかな頬、筋骨隆々の肉体 「フランダースの犬」の少年ネロが、憧れた才能

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なるほど、そう言われて見ると『聖母子と聖エリサベツ、幼い洗礼者ヨハネ』には、『眠る二人の子供たち』の左側の子供の頭部が、左右を逆にして、目を開けられて使われている。弟子たちがルーベンス風の顔に描いた作品だ。

ペーテル・パウル・ルーベンス(工房)、『聖母子と聖エリサベツ、幼い洗礼者ヨハネ』、1615-1618年頃、 油彩・カンヴァス、154×119cm、フィレンツェ、パラティーナ美術館  ©Gabinetto fotografico della S.S.P.S.A.E e per il Polo Museale della città di Firenze
左の子供はキリスト、右の子供はヨハネ。子羊にまたがったヨハネがキリストに敬意を示す場面が描かれている

左側は聖母マリアとキリスト、もう一人の子供は洗礼者ヨハネ、右側はその母でマリアの従姉妹のエリサベツだ。この構図は人気を集め、工房で複製が何枚も制作された。

展覧会では日本初公開の作品を含む油彩画のほか、工房での制作の仕組みも知ることができる。

工房の画家の中には、後に有名になったヴァン・ダイクもいた。画家たちの独立後の作品も紹介されている。また、人物をルーベンスが担当し、動物は動物画家、風景は風景画家が描くなど、一枚の絵を何人かで共同制作した作品もある。

「意欲的で向学心にあふれ、しかも謙虚。成功しておカネもたくさん儲けた」というルーベンス。彼の作品を通して、その時代も見えてくる展覧会だ。


ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア
3月9日~4月21日
Bunkamura ザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
10:00~19:00(金・土曜は21:00まで、入館は閉館の30分前まで)
会期中無休
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
一般1500円

北九州市立美術館(4月28日~6月16日)、新潟県立近代美術館(6月29日~8月11日)に巡回

 

 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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