「出世したのに報われない」課長が抱える葛藤 上司と部下の板挟みで裁量もなく仕事漬け

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一方、人事のプロたちは現在の課長の仕事ぶりをどうみているのか。

匿名を前提に大企業の人事部長に聞いたところ、機械メーカーのAさんは「愚痴ったりぼやいたりしてばかりの課長がすごくたくさんいる。ましてや、部下と一緒になって部長や役員に対する愚痴を言っているようではダメ。課長以上の役職は期待できないなと思う」と話す。

ただ、「今の課長はとにかく仕事に追われており、昔の係長くらいのイメージ。タクシー券利用などの特権もほとんどない」とAさんも大変さは認識している。一方、エンジニアリング会社のBさんは「うちの場合、出張の日当も役職で分かれておらず、部長も新入社員も一緒。そういう意味では課長は責任が重い1人のワーカー」と打ち明ける。

このBさんは「課長に選ばれた時点では、それまでの個人の業績を評価して昇格させているはず。だから、マネジメントに手こずるのは当たり前」と一定の配慮を示す。しかし、「課長がいちいち部長にお伺いを立てていると、部下は課長を飛ばして直接上に確認を取るようになる」と言われるのだから、新米課長はツライ。

課長の5割が「飲み会」が役立つと回答

プレイングマネジャーの課長の業務は増える一方だともいわれる(写真はイメージ)(撮影:今井康一)

ITサービス会社に勤めるCさんが「課長は、今日明日の仕事をどうするのかに加え、労務管理もますます大変になっている。われわれとしても、悩める課長にできる限りの支援をしないといけない」というように、人事部側の役割も当然ながら重要だ。

産業能率大学が上場企業の課長を対象に行ったアンケート(2015年11月実施)で、「部下とのコミュニケーションに有効だと思う施策は?」という問いに対し、52%と最も割合が高かった回答は「飲み会」だった。そこで、本誌アンケートで現役課長に部下と飲みに行く頻度を聞いてみたところ、5人に1人が「部下とは飲みに行かない」と答えた。さらに「2~3カ月に1回」が34%、「月1回」が20%と、飲みニケーションをする課長でもその頻度は意外に低かった。

プレイングマネジャーとして課長の業務は増える一方だといわれる。本誌アンケートでは課長の睡眠時間は約3人に1人が5時間未満。取引先との付き合いや自分の業務が多くて部下を誘う暇もないのか、それとも部下に断られるのが心配で遠慮しているのか。いまどきの課長は、とにかく大変だということがよくわかる。

井下 健悟 東洋経済 記者

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いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融業界の業界担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

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