そんな中、ラップ、特にフリースタイルラップは、時には汚い言葉が飛び交うほどに本音と本音をぶつけ合う。その姿は、なかなか本音を出せずに抱え込んでいる若者にとっては痛快だ。まるで自分の本音を代弁してもらっているかのようで若者たち興奮させる。
そして、相手のラップに対して、即興で的を射た返しをするアドリブ力。さらには返すだけでなくビートに乗りながらリズム良く、韻まで踏んだうえでアンサーをする音楽センスとボキャブラリーの豊富さは、現代の若者が求めているものに限りなく近いのではないだろうか。
そのようなラップに対するあこがれから、リスペクトするラッパーのファッションなどを真似する若者も多くなってきている。海外で生まれたラップを、日本語ラップとして流行らせたラッパーたちは、外国の文化にとても敏感だ。いち早く海外の流行を取り入れ、求心力と発信力を併せ持つ彼らは、若者の間で次のトレンドリーダーになっていくのではないだろうか。
原田の総評:第3次ラップブームはいかにして生まれたか
今時の若者が、ラップにはまっている実態はいかがでしたでしょうか?
現在のラップブームを若者の視点で分析してもらいましたが、もう少し音楽業界側からの視点で考えてみたいと思います。
まず、現在のラップブームは、「第3次ラップブーム」と呼ばれていますが、そもそも「第1次ラップブーム」は90年代に起こりました。
その象徴が1994年の『今夜はブギーバック』(スチャダラパー featuring 小沢健二)で、CDセールスが50万枚を超えた日本語ラップです。
他にも93年、m.c.A・Tがシングル『Bomb A Head!』をリリース。94年にEast End×Yuriがシングル『Da. Yo. Ne』をリリース。97年にはDA PUMPがデビュー。99年にはDragon Ashがアルバム『Viva La Revolution』をリリースしました。
次に、「第2次ラップブーム」は2000年代に入ってからで、KICK THE CAN CREW(例えば2002年『マルシェ』など)やRIP SLYME(2002年『楽園ベイベー』など)などがヒット曲を連発しました。
そして、この数年起こっているのが「第3次ラップブーム」です。前述したように、例えば、オリラジ率いるRADIO FISHの「PERFECT HUMAN」、LDHからデビューした初のラップグループDOBERMAN INFINITY、AAAからラッパーとしてデビューしたSKY-HIはヒットチャートなどで上位を獲得しています。
特筆すべきは、こうしたラップのヒット曲が、芸人であるオリラジやアイドルのももクロなど、さまざまなジャンルの人によって生み出されるようになったこと。
また、いわゆるラッパー的なビジュアルをしていない、一見普通の格好をしている、ぼくのりりっくのぼうよみ(18歳)、女性ラッパーで去年メジャーデビューした19歳のDAOKO、CDショップ大賞2016で準大賞を受賞した女性ラッパーを有する水曜日のカンパネラなどが登場したこと。
また、彼らがこれまでメロディのなかったラップにメロディをつけた、歌かラップか分からないいわゆる「ウタモノラップ」を歌うケースが多くなっていることで、これまでよりも一般の若者にラップが非常に身近に感じられるようになったことが、「第3次ラップブーム」を引き起こしているのかもしれません。
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