宇宙で"ノー残業"、星出飛行士の段取り術

器用じゃなくても、重大ミッションを大量にこなす

人を助けるその前に……

その2回目の船外活動。1回目の船外活動後、ほかのトラブルも重なり、ISS内の電力は約6割にまで低下。また星出らが船外活動を行う際、船内で補佐するアカバ飛行士の地上への帰還日が迫っていたこともあり、2回目の船外活動は、必ず成功させなければならない状況だった。

地上では、NASAがトラブル対応の「タイガーチーム」を組織。ふだんは休日に仕事をしない米国人地上スタッフも3連休を返上。昼夜兼行で、一丸となって原因究明と解決のための手順書作りに当たった。

トラブル対処の肝はねじ穴につまった金属片、つまり「ゴミ」を取り除くことだった。ゴミを取り除くために宇宙で使えるものはないか?浮上したのがISSにある「歯ブラシ」。

地上からの指示に従い、歯ブラシを切り、工具に取り付け、テープで巻きつける。また、予備のケーブルを使って「煙突掃除」道具も作った。径が太くなりすぎるとネジ穴に入らなくなるため、何度も計り直す。同様に宇宙にある材料をかき集め、合計4種類の工具を新たに製作した。

一方、地上では工具が実際に宇宙空間で使えるかを試験し確認すると共に、宇宙飛行士が無重力状態を模擬し作業を行ってみて、作業手順をわかりやすく宇宙に伝えるための手順書が作られた。まさに映画「アポロ13」のようなトラブルシュートが行われていたのである。こうした連携で第2回の船外活動は見事に成功し、ISSに電力が蘇った。

「宇宙と地上のチームワークの勝利。もっとも大きな達成感を味わった瞬間だった」と星出は振り返る。

星出は頻繁に「チームワーク」という言葉を口にする。宇宙飛行士だけでできる作業は限られる。世界中の管制官や技術者らとのグローバルな連携があって初めて、宇宙ミッションが成功できる。星出自身そうしたチームの一員として働き、貢献できることが何よりの喜びだと言うが、その前に大事なことがあるという。

「まず自己管理です。自らを犠牲にして人を助けることが重要と思われるかもしれない。自分もかつてはそう意識しがちだった。でも、自分が怪我をしたり作業が遅れたりして他の人に手伝ってもらうことになれば、結果的にチームの足を引っ張ることになるのです。自分の体調をしっかり保ち、仕事をまず終わらせた上で、余力があれば他の人をサポートすることを意識していました」

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