宇宙出張中、日々の仕事の中では疲れていないと思っても、金曜日には一週間分の疲れが蓄積すると感じたこともあった。万一、緊急事態が起こった場合に備えて、対処できる余力は残さないといけない。
だから第1回目の船外活動が終わったとき、トラブルの原因や対策が気になったものの、次の船外活動に備えて重要視したのは「身体を休める」こと、そして宇宙服のメンテナンスだったという。
バッテリーを再充電し、二酸化炭素の除去装置を再度使えるように準備する。それらはISSにいる自分たちにしかできないことだし、次の船外活動を安全に行う、つまり命を守るためにも必要な準備だった。
星出飛行士は宇宙飛行士に3回挑戦し、3度目でやっと夢を掴んだ人である。1回目の挑戦の後、NASDAに入社しエンジニアとしてロケットの開発に関わり、宇宙飛行士の技術支援を担当、「きぼう」実験棟開発も間近で見ていた。これら全ての”裏方”としての経験が、宇宙飛行に生かされている。
星出が打ち上げの時に有志の仲間たちが作ったTシャツには、親しみをこめて宇宙服を着たおさるが描かれていた。「宇宙飛行士というよりは仲間。もっとも親しみやすい宇宙飛行士」と関連メーカー関係者との間も近い。
宇宙飛行士になる前から星出をよく知る関係者は、「同時にたくさんのことをやる器用さはないけれど、事前にやるべきこと、順番を整理したうえで、結果としてたくさんのミッションを達成していくタイプ」と評する。
器用な人という印象を持っていただけに意外な気がした。だが自分が器用ではないと自覚しているからこそ、準備を念入りにし、確実に1つひとつの仕事をこなした。そして結果的に、”残業なし”で多くの仕事を成功に導くことができたと言えるのではないだろうか。(=敬称略=)
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