宇宙で"ノー残業"、星出飛行士の段取り術 器用じゃなくても、重大ミッションを大量にこなす

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「ぼくらが宇宙についたとき、先に滞在していたジョーがチームの方針をビシっと言ったんです。『朝礼から夕礼までしか仕事はしない』と。つまり残業はしない。みんなでノー残業を実現するために、自分の仕事が早く終わった人は他の人の仕事を手伝おうと提案してくれたんです」

宇宙飛行士の1日は、朝8時頃の朝礼で始まる。一日の仕事内容を地上と結んだミーティングで確認するのだが、星出らはその時、自分だけでなく互いの作業スケジュールも見て、大変そうな作業を把握し、助け合った。

ノー残業を決めたら、チームワークも結果的によくなったという (出典:JAXA/NASA)

「スケジュール上は1人でやることになっていても、実は2人で行う方が効率的な作業があります。例えば荷物の運搬作業。1人で手順書を見ながら運ぶより、2人1組になって1人が手順書を見て指示を出し、もう1人が運んだ方が効率的だし見落としも少ない。その日のスケジュールに影響しない範囲で、チームで効率よく仕事をできる方法を考えて実行してました」

自分の仕事が終わったら「なんか手伝うことない?」と声をかけあう。

「でもね、みんなの仕事がさくさく進んで今日は昼過ぎに予定の仕事が全部終わるな~と思う日に限って、トイレが壊れる(笑)。トイレの故障って僕らにとっては『待ったなし』の一大事なんです。タイミングを伺ってるみたいだね、と笑いながら修理してました」

トラブル発生、「段取りなし状態」での連携プレー

だが、いくら準備を綿密にしても、宇宙では想定外の事態は起こりうる。星出が滞在中も何度もトラブルに直面した。もっとも危機的だったのは第1回の船外活動だった。

船外活動で星出が予定していたのは、装置の交換作業だった。ISSの電力分配の要となる、4つの電力切り替え装置の1つが故障していたのだ。まず故障した装置を取り外し、新しい装置を取り付ける。しかし、新しい装置を取り付ける際、ネジが規定通りにしまらない!準備されていた代替プランを次々試すが、どれもうまく働かなかった。

準備したプランがどれも機能しないとわかった時、次の段取りをどう考えたのか?

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