「段取りなし状態です(笑)。地上も宇宙の我々も想定していなかった。リアルタイムで地上と議論しながら進めるしかない。地上が提案する作業を1つずつやっていきました」
地上には専門家や船外活動経験の豊富な宇宙飛行士も集まり、対応を協議していた。1回の船外活動は、酸素量などの制限から、通常約6時間半で行われる。限られた時間の中で『事態をこれ以上悪くしない』よう、細心の注意を払いながら、作業を進めることが優先されたという。
星出もまた、自分に何ができるのか、必死に考えていた。
「宇宙で作業をしているのは自分たちだから、作業しながら見えるもの、感じること、例えばネジを回したときにどのくらいの反力があるかを、言葉で伝えていった。こうやってみたらどうだろうと、作業を提案することもありました。
ただし、宇宙飛行士が話す時は、地上側は議論をストップして聞かなければならないので、必要以上のことは話さないように気をつけていましたね」
宇宙からの一方的な会話は、却って地上チームの議論を妨げる恐れがあることを星出は知っていた。過去、NASAの管制チームで宇宙飛行士と交信を担当するCAPCOMを何度も務めていた経験から、地上の管制チームの状況が容易に想像できたのだ。
船外活動は予定の時間を大幅に上回る8時間17分かかって、ついに終了した。冷静で確実な作業と、チームワークを重視した星出の仕事ぶりは、NASAに高く評価された。
船外活動は大変な仕事であるが宇宙飛行士にとっては憧れの「晴れ舞台」である。
当初、星出らの滞在中の船外活動は1回しか計画されていなかった。だが、完了しなかった装置の取り付けのため、急きょ2回目の船外活動が計画された。星出は1回目の作業の手際よさを高く評価され、もう一度、船外活動の大役を担うことになる。
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