「酒に関わっておられるすべての大先輩方へ。
入り口にたったばかりのある後輩からのお願い」
こんにちは。親父が常連として通わせていただいている縁で、僕が、先輩方にこのお願いをさせていただくことができるようになりました。若輩者ゆえ、極端な意見かもしれませんが、お読みいただければ幸いです。
若者の酒離れ、僕が同世代の友人たちと飲んでいても、それを実感します。
同時に感じるのが、酒が酔うためのものであり、味わう習慣はない、ということです。
飲み会に行っても……まぁたいていは飲み放題付きの居酒屋ですが、飲み放題のメニューから、ビールとかカクテルとか、自分が飲み慣れているものを頼む。逆にいえば、それしか頼まない。
そして、飲める奴は、際限なく、酔っぱらうまで飲む。騒ぐ。
学生のうちは、経済的な理由もあるので、しょうがないと思って、つき合ってきましたが、社会人になって収入を得るようになっても、変わらない。不思議だなと思いましたが、それしか飲み方を知らないんですね。
僕は、たまたま、親父が酒を含め、大人の楽しみを大事にする人なので、その影響もあって、酒を飲んで味の違いとか、それが造られている土地の文化とかを知ることを楽しいと感じるようになったのですが、同世代では少数派だと思います。
(店主、割り込みます)
――酔っぱらうまで飲んで、ただ騒ぐだけでは、疲れるし、かっこ悪いし、飲酒に対していい印象がもてないですよね。
(株)カカクコムが、2009年に行った調査では、20代の42.9%が、「酒は飲めるが好きではない。おいしいと感じない」と答えています。この回答は、同30代の26.3%、40代の22.9%に比べても顕著です。
(以上)
なぜかっていうと、ほんとに、知らないんですよ。酒のおいしさとか、かっこいい飲み方とか、教えてくれる人がいないんです。
でも、ぼくが友人にすすめるのはもっぱら日本酒ですが(店主 注:日本酒は500~600円だせば、ちゃんとした純米酒が飲める。若者の財布に優しい酒だからだそうです)、混ぜ物のない、米だけでできた酒は、日本酒を飲んだことのない奴でも、「うん、おいしいね、これ!」っていいます。
入り口はなんでもいいんだと思うんです。酔って、騒ぐだけが酒の飲み方じゃないってことがわかれば、じゃあ次はどの酒を飲んでみようか、ってことになる。
事実、それで、いっしょにいろいろ飲みに行くことになった友人もたくさんいます。
聞きかじっただけの知識ですが、フランスにはワイン、ドイツにはビール、ならば日本には日本酒だと思います。日本酒を飲み慣れない人は、あの匂いが、というのですが、もともと日本人は、米を主食にしてきた民族です。米の匂いには、慣れているはずなんです。
ただ、現状では、米100%の酒も、アルコールやそれ以外の添加物を混ぜた酒も、同じ「日本酒」として売られています。よく見ると、純米、本醸造などの表示もあるのですが、メーカーによってばらばらだし、入り口に立ったばかりの若者には見分けがつかない。
なので、日本酒に関わる先輩方にお願いしたいのは、100%米だけでできた日本酒を、それとわかるようにしてほしいんです。
ドイツにはビール純粋令というものがあり、ビールと表記する際の基準を、厳格に決めているといいます。なので、飲酒経験の浅い若者でも、間違えずに本物のビールを選ぶことができると聞きます。
日本人は、やはり、飲酒の楽しみの軸を日本酒に置くべきだと思います。木にたとえると、しっかりした幹の育たないうちに(洋酒やカクテルの)枝葉ばかり茂っても、大木にはならない。無惨な枯れ方をするだけだと思うんです。
主食でもある米だけでできた酒、値段も手頃でどこでも飲める純米酒を、同世代の人たちに飲んでもらって、そこから酒を飲む楽しみを広げてほしいなって。あ、酒造メーカーには一銭ももらってません(笑)。
(店主 まとめ)
――前々回の「酒は大人の教養である」でもお伝えしましたが、日本人が自国の酒(純米酒以外のパック酒等すべて含む)を飲む頻度は、100杯のうち6~7杯だとか。社会人1年目の若者の意見、傾聴する価値があるように思います。
イラスト:青野 達人
次回は3月22日(金)掲載。テーマは、ひき続き「『若者の酒離れ』は、本当か?」――海外勤務の長い父親を持つ帰国子女、そして海外滞在の経験なし、ただ時流を見据えて家業に邁進した結果、国際派となった父親を持つプログラマー、ふたりの息子世代へのインタビューを紹介します。
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