定額の読み放題、権利者の「稼ぎ所」はどこか 「使われている」は、こうやって判断される
つまりKDPの場合、全ページが読まれていない本は「読まれた分」だけが配分対象、というわけだ。こうなっている理由は、ダウンロードするだけで読まれない本を「使われていない」と判断することで還元額を下げる(Amazon寄りな言い方をすれば、使われた分をより正確に把握する)意図があるのだろう。
電子雑誌読み放題サービスである「dマガジン」の場合には、雑誌のうち「読まれたページ数」に応じて配分される。雑誌全体のうち、読まれないページはカウントされない。これは、検索やクリップ機能で「欲しい部分だけを読んでいる人」の利用量も含め、正確に把握した上で還元額を決める、という仕組みであるからだ。
音楽や映像の場合、一部だけしか見聞きしていないから……という話はあまりないと認識しているので、基本的には「1再生あたり」になる。ただし、異常に再生時間が短い場合(たとえば数秒で終わったとか)には、正常な視聴とはみなさない、という仕組みがあるとは聞いている。
権利者との交渉次第の部分も
一方、「視聴がなくても収益配分がある」契約もある。それが「ミニマムギャランティ」だ。特に映像などで「力のある権利者・コンテンツ」と契約する場合にでてくる契約形態である。
ミニマムギャランティとは「最低報酬」を保証する契約形態だ。利用料に応じた契約形態では、利用が少ない場合、売上も当然小さくなる。サービスがまだ小さいうちには売上も当然小さいので、力のある=売上の大きなコンテンツを持つ権利者は、サービスにコンテンツを提供するモチベーションが低くなる。そこで、どれだけ再生数が小さくても「最低限これだけは払う」というミニマムギャランティを設定し、権利者のモチベーションを引き出す形での交渉が行われる。
映像で特に多いのは、コンテンツ制作にコストがかかり、ヒットコンテンツの価値が非常に高いからである。ミニマムギャランティが大きいので交渉がまとまらない……という話はよくあることだ。映像だけでなく、書籍でも音楽でもゲームでも、ミニマムギャランティ契約は存在する。そこは結局、権利者との交渉次第ではある。
というわけで、定額制コンテンツサービスについては、権利者に利益を還元したい場合、積極的に「見る」「読む」「聞く」ことが重要だ。「ライブラリーには登録されているから、いつでもいい」というのは、権利者にとってはあまりうれしいことではない。
だが、定額制コンテンツサービスに登録されることは、コンテンツへ消費者がリーチするハードルを下げる効果が高い。特に、通常であれば露出の少なくなるコンテンツや、量が多くて普通に買うと消費者が戸惑うコンテンツなどに有利である。
すなわち、旧作・旧譜や雑誌のバックナンバー、本数の多いドラマ・アニメコミックに向いている……ということになるわけだ。
定額制コンテンツサービスに向いたプロモーションでは、「発見してもらってすぐに大量消費する」ことを促すものが求められる。これは、いわゆるライブラリ型とはまったく異なるもの。その辺を意識した使いわけが重要だ。
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