尖閣防衛に黄信号?「米軍完全撤退」のリアル

プレストウィッツ氏と小原凡司氏が徹底討論

しかしながら、問題は、日本は中国が攻撃を仕掛けてきても、防衛するだけで、中国本土を攻撃する法的根拠もなければ、中国本土を攻撃する十分な能力も持ち合わせていないことです。ですから、そのような事態になった際にはどうしてもアメリカ軍の支援が必要となります。これが日米同盟の基本的な構造です。

国際社会は、いまの中国のやり方を受け入れない

プレストウィッツ:中国は、2001年にWTOへ加盟した際には、アメリカが築いてきた国際秩序に加わることを希望していましたし、その一員となることで多くのメリットを享受できると考えていました。しかし、それから15年が経ったいま、中国も力を付けてきましたし、アメリカのつくったルールの下では満足できない部分を多く感じるようになりました。

日本も欧州もアメリカの築いてきた国際ルールのもとで繁栄してきましたので、アメリカに代わって中国がコントロールする国際秩序は容認できないでしょう。それは日本や欧州のような先進国だけではなく、ASEANなどの途上国も同様だと思います。世界のほとんどの国は、中国が支配する国際秩序は望んでいないと思います。

さらに、中国の経済について言えば、昨年あたりでひとつの区切りの年を迎えたと言ってよい。これまでは大規模な開発中心で、インフラや住宅建設、それに必要な鉄鋼、アルミ、セメントなどの工場を次々に建設していくことで、たいへんな勢いで経済成長を遂げてきました。しかし、そのモデルは完全に終わりを迎えたと言えるでしょう。

国内で成果を挙げられない共産党政権は、外に目を向けています。AIIB(アジアインフラ投資銀行)や「一帯一路」構想、南シナ海や尖閣をめぐって強硬な態度に出てきていることはその現れです。南シナ海をめぐっては国際仲裁裁判所の判決を無視しています。しかし、中国独自の価値観、判断基準を国際社会が受け入れることは絶対にありません。中国のプレゼンスは現在がピークで、今後は右肩下がりになるでしょうから、アメリカ人の立場からすると、中国の行動、強圧的にも見える行動に対して、過剰に反応し過ぎるのもどうかと考えます。

小原:たしかに長期的にはその通りだと思いますが、中国の行動で警戒しなければならないことは、中国は新たな国際秩序、国際ルールをつくると言っている点です。習近平主席は、2015年9月3日の軍事パレードにおいて、「公平とwin-winを核心とする新型国際関係を積極的に構築する」と宣言しているのです。つまり、現在の国際ルールの下では、中国は不公平な立場に置かれる、「win-win」ではないと主張しているのです。そして、それを実現するにあたっては、話し合いではなく力の行使も辞さないという姿勢を示しています。

そのような状況の中で、仮にアメリカがアジアにおける安全保障政策を見直した場合、たとえば尖閣で日中が衝突した際、アメリカが関与しないとなれば、日米以外の同盟関係に与える影響はきわめて大きいと思います。となれば、アメリカの世界戦略全体に与える影響はきわめて大きなものになる。端的に言えば、アメリカという国が信用を失うことになります。

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