南シナ海判決後の「中国」、どう扱うべきか 中国の面子を潰すのは得策ではない

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南沙諸島のヒューズ礁とみられる衛星画像。米戦略国際問題研究所(CSIS)が運営するサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ」が2月に提供(写真: ロイター/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe/Handout via Reuters/File Photo)

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中国が軍事拠点化を進める南シナ海をめぐり、フィリピンが中国を相手に申し立てていた仲裁手続きで、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所はフィリピンの主張を認めた。仲裁裁判所は厳しい表現を使って、南シナ海を実質的に自国の海域とする中国側の主張を退けた。

中国は南シナ海の約8割に当たる「九段線」で囲まれた海域についての歴史的な権利を主張してきた。しかし仲裁裁判所はこれについて法的に無効とする判断を下した。中国が岩礁などを埋め立てて形成している人工島に関しても、他国が周辺水域を航行するのを排除する権利を付与するものではないとした。

「九段線」の公式な定義は不明

中国は「九段線」が何を意味しているかについて、公式には説明していない。「歴史的な権利」に言及する者もいれば、「伝統的な中国の漁場」だと言う者もいる。そうした中で、中国はインドネシアやベトナムなど近隣国の漁業権や資源開発権を侵害してきたことから、国際社会の反発を招いてきた。

仲裁裁判所の今回の裁定は、国際法が今や、陸地の領有権と直接関係ない「伝統的」あるいは「歴史的」な海上領有権の主張を認めるようになったとの考えに風穴をあけた。

本来、居住可能な島の領有権には、12カイリ(約22キロ)までの領海、200カイリ(約370キロ)までの排他的経済水域、関連する大陸棚に対する権利が含まれる。従って陸地がない場合には、国家はその領有権を主張できない。

中国は、ベトナムやフィリピンなどが領有権を主張しているにもかかわらず、南沙諸島や西沙諸島における居住不能な島や岩礁の領有権を自国が有すると主張し続けるだろう。

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