尖閣防衛に黄信号?「米軍完全撤退」のリアル プレストウィッツ氏と小原凡司氏が徹底討論

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しかし、それは表面的なもので、注意深く見れば、日本には迫りくる危機が間違いなく存在しています。たとえば安全保障の問題です。共和党の大統領候補になったトランプが、選挙運動中にアメリカ軍は日本や韓国から撤退すべきと訴え大変話題になりました。仮にアメリカ軍撤退となれば、アジアのバランスは大きく変わり、日本も安全保障政策を大きく見直さざるを得なくなります。

クライド・プレストウィッツ(Clyde Prestowitz)/1941年米国デラウェア州生まれ。1970年代に外資系企業役員として日本に滞在。国務省勤務、民間企業勤務などを経て、1981年商務省に入り、86年までの間、レーガン政権で商務長官特別補佐官などを務める。現在、経済戦略研究所(Economic Strategy Institute)所長。上院議員時代のヒラリー・クリントン氏の貿易・通商アドバイザーを務めた実績がある。日米貿易摩擦時に辣腕対日交渉担当官として鳴らし、テレビ・新聞・雑誌などで日本に多数の提言を行っている。著書にベストセラー『日米逆転』(ダイヤモンド社)などがある

先日、ある韓国の学者と話をする機会があったのですが、心情的に韓国は、中国を敵国とは思っていないと言っていました。そこが日本との大きな違いです。もしアメリカがアジアから退くようなことがあれば、中国・韓国同盟が結成される可能性がないとは言えません。そうなれば、日本は東アジアで孤立することになります。

現時点では多くの人が、そのようなことは非現実的だと考えるでしょうが、過去の歴史において、対外政策の大転換は幾度も起こっています。ですから、あらゆる場面を想定してシナリオを立てておくことはきわめて重要なのです。

小原凡司(以下、小原):プレストウィッツさんのご著書は、日本が解決すべき課題が本当によく整理されていると感じました。そのような課題を解決していくためには、既得権の打破が大きなポイントになると思いますが、それは実に困難を伴うでしょう。既得権を持つエスタブリッシュメントの権益を崩し、それから生み出される富の配分を見直さなければなりません。

そのような改革を成し遂げるためには、相当に大きなショックが必要となります。金融危機、大型倒産程度では、それを変えるだけのショックにはならないでしょう。日本が大変革を遂げた際には、強力な外圧が働いていました。それに匹敵する強力な力が働かなければ、なかなか日本は変わらないのではないかと思います。

中国の台頭にどう対処するか

――小原さんは、軍事・外交問題、とりわけ中国がご専門ですが、現在の日本における安全保障上の危機、とりわけ中国の台頭について、どのようにご覧になりますか。

小原:まず日本は、あからさまに中国を敵視する必要はないと思います。しかし、現在、中国が南シナ海で行っているような行動については、日本は断じて受け入れることはできません。中国が南シナ海で行っていることは、既存のルールを暴力的手段で変更しようとするものです。中国の行動は南シナ海という局地的な問題には止まらず、国際秩序に対する挑戦と受け取ってよいでしょう。

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