尖閣防衛に黄信号?「米軍完全撤退」のリアル

プレストウィッツ氏と小原凡司氏が徹底討論

もっと言えば、そのような暴力的手段で国際秩序を動かす試みは、中国に限らずロシアのクリミア併合、イランや北朝鮮の核開発、さらには中東のISISなど、世界の複数の地域で起こっています。

小原 凡司(おはら ぼんじ)/東京財団 研究員・政策プロデューサー。1985年防衛大卒。元一等海佐。北京の防衛駐在官や海幕情報班長を歴任

国際秩序や国際社会のルールを変更すること自体は、必要に応じて行われるべきだと思います。問題はそれを「話し合い」で行うのではなく、力による変更を試みる国家が出現してきていて、中国もその流れに乗る最たる国家だということです。尖閣諸島や南シナ海における中国の行動は、日本やフィリピン、ベトナムという個別の国家に対する挑戦にとどまらず、戦後アメリカが築き上げてきた国際秩序、国際社会のルールそのものに対する挑戦にほかなりません。

日本はアメリカが築き上げてきた国際秩序、国際社会のルールの中で、繁栄し富を築き上げてきた国ですから、その中でも「国際的な問題を解決するのに暴力的手段を用いない」という最低限のルールに異を唱えるかのごとき中国の行動を容認することはできないと思います。

――アメリカの相対的な力が落ちてきて、国民の意識も内向きになる中で、やはり日本の安全保障には大きな変化が訪れる可能性が高いのではないかと思われます。プレストウィッツさんのご著書でも「2017年、尖閣占領危機」というシナリオに言及されていますが、小原さんは尖閣の問題についてはどのように見られているでしょうか。

中国側のシナリオは…

小原:尖閣についての中国側のシナリオは、徐々に日本の実効支配を崩すというものです。それも軍を使わずに海警局(コーストガード)を動かす。中国の海警局の巡視船が日本の海上保安庁の巡視船よりも長く尖閣近海に止まって、実効支配をアピールしていく。さらには偽装漁民による上陸も考えられます。彼らは偽装した時点で軍ではないので、海上保安庁が対処することになります。

いずれにせよ、万が一、中国が実力を行使した場合、日本は躊躇なくこれを防衛するために自衛隊を動かして中国の行動を阻止することになります。たとえば、中国の海警局による不法占拠から始まったとしても、海上保安庁で対処できないとなれば、日本は「海上警備行動」を発令することになります。そうなれば、中国側は軍事力の行使と認識しますので、中国側も軍事力で対応してくることになるでしょう。そうした場合には、一気に両国の軍事衝突につながる可能性はあります。

とは言え、領土防衛は日本の責任で、必ず責務を果たさなければなりません。領土保全については、1948年のバンデンバーグ決議の取り決めがなされていますので、日本の防衛は日本が行うということです。

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