子なし夫婦に「とやかく言う人」の偏った信念 それは自分に「裁く権利」があるものなのか

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理性主義の要素を強く抱いて生きる人は、道徳心も強く、エスカレートすると「子なしハラスメント」の加害者になるかもしれません。子どもがいない夫婦に対して「まだ子どもを作らないの?」「男は(女は)子どもを育ててこそ一人前だよ」「君のためを思って言うんだよ」など、悪意はなくとも、他者の生き方を否定し、生きづらくさせてしまうのです。

たしかに高度成長期には、入社から定年まで同じ会社で勤めあげ、妻は専業主婦、子どもは2人、いつかは持ち家……という家庭が理想とされていたかもしれません。しかし、社会構造は刻々と変わっています。冒頭の統計が示すとおり、今ではそんな家庭を探すほうが難しいかもしれません。

毎度書いていることですが、自分の「べき論」を他者に押しつけることは、イコール、わがままの押しつけに過ぎないかもしれないのです。

また、「隣の芝生は青く見える」からか、充実した生活を満喫している子なし夫婦に対し、嫉妬心からの「口撃」をする人がいます。嫌味っぽく「もう毎日、子育てが大変で。あら、お宅はお子さんがいらっしゃらなかったんでしたね」などと言ってくる人です。こちらは、相手を不快にさせたいだけの悪意ある子なしハラスメントと言えそうです。

「口撃」した側がかえって傷つく可能性も

次に、子なし夫婦とその親の関係で考えてみましょう。親は子を「自分の分身」と思いやすいもの。「コントロールできるという思い込み(万能感情)」も働きやすいため、「孫の顔見たさ」も相まって、もしかすると子のいないわが息子・娘夫婦を「親不幸」呼ばわりしてしまうかもしれません。

けれど互いに、不快なことがあるたびにいちいちイラついたところで、何も解決しません。怒りに任せて報復「口撃」で返しても、それがきっとまた自分の苦しみや後悔となります。自分がムキになって相手の考えを修正しようとすれば、大きな労力が必要になるだけでなく、さらなるバッシングを返され、自分自身が傷つく可能性だってあるのです。そんな時間はまったく不毛でしかありません。

私たちの日常生活において、不快な感情や出来事を避けるのはとても難しいこと。だからこそ、臨機応変にいくつかのスキルを切り替えて対応できるようにしておくのは、とても意味のあることでしょう。

これまでも、アンガーマネジメント・テクニック(スキル)として、「タイムアウト(強い怒りが生じたら、いったんその場を上手く離れる)」や「アサーティブコミュニケーション(自分も相手も大事にする、I’m OK, You are OKのコミュニケーション)」などを紹介してきました。それぞれ、ぜひ過去記事をご参照いただければと思います。

合わせて、「鈍感力」や「やんわりスルー力」を鍛えることも重要でしょう。「鈍感力」は医師・渡辺淳一さんの著作で有名になった言葉ですね。相手からの批判的言葉にいちいち怒ったり落ち込んだりすると、苦しくなってきます。手っ取り早く「他人は他人、自分は自分」と割り切ってしまいましょう。

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