子なし夫婦に「とやかく言う人」の偏った信念 それは自分に「裁く権利」があるものなのか

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夫婦お2人で過ごされる裏側には、進んで人生の選択をされた場合と、不妊治療を断念されたなどの事情がある場合があるでしょう。ただひとつ言えることは、ここで紹介させていただいた方々は皆さんとても幸せそうに見えますし、お仕事も私生活も充実しているように感じます。

子どものいない夫婦に関しては、一般的に「自由な時間が多く持てる」「仕事や趣味に没頭できる時間を捻出しやすい」「いつまでも新鮮なカップルでいられる」「貯蓄を増やせる」といったメリットが挙げられます。

対して、デメリットもさまざま語られます。「老後が寂しくなる」「親に孫の顔を見せてあげられない申し訳なさを感じる」「子育て中の同僚から余計な仕事を押し付けられる」といったものです。

また、子なし夫婦は「離婚しやすい」と言われたりもします。確かに離婚がちらついたとき、子どもがいなければハードルはより低くなるでしょう。「子どもがほしい or ほしくない」という夫婦間(周囲も含め)での意見の食い違いも、夫婦の関係を壊す原因になるかもしれません。

ただ一方、特にアメリカでは、「子どもがいる夫婦のほうが、子どもがいない夫婦よりも幸福度が低い」という研究結果が話題を呼んでいます。……ちょっと考えてみるだけでも、どちらがより幸せかなんて、客観的に決められるものではないとわかりますね。

自分には裁く権利のないことにまで口を出す人

幸福を目指す対人社会心理学に「ポジティブ心理学」という領域があります。ポジティブ心理学には、主観的な幸福感や人生の満足度、人間としての自律性や理性的判断力、健康状態などなど、あらゆる面で”適応”ができている「well-being」という包括的概念があります。

well-beingには2つのアプローチがあります。その1つは「快楽主義」といって、「個人の興味と楽しみを最大化する」という考え方をとっていこうというもの。そしてもう一方は「理性主義」といい、「人間が潜在的に有する徳や善を実現すること」を意味します。

この2つのアプローチは両極にあるものですので、どちらか一方を選択するというものでなく、快楽主義と理性主義を上手く調和させながら、個人的な成長、価値ある対人関係、社会貢献などによって人生満足度を高めていくことがwell-beingのために必要な感覚といえます。

前回、私たちの怒りにつながりやすい「コアビリーフ=べき論=怒りのくせ」として、「道徳心が強い人」について触れました。上記のうち「理性主義」の側が特に強い人とも言えます。このタイプの人は、ルールやマナーをきちんと守る正義感の強い人です。ただ、そのこだわりが度を超えると、自分には裁く権利のないことにまで口を出し、「自分がしつけなければ」と介入しては、怒りをあらわにしてしまう場合があります。

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