別居婚夫婦が「里親」を目指す意外な理由

子どもは持たない、だけど未来に関わりたい

「最初は私が仕事を辞めて熊本に行くことも考えました。でも、営業職のダンナは平日は西日本各地を飛び回っています。どのみち土日しか会えないのであれば、一緒に住む理由はほとんどありません。月に2、3回は主に東京で会っています。平日はLINEでのやり取りが中心。私が出張で海外にいても無料で通話ができるLINEの存在はすごく大きいです」

長距離の交通や通信のコストが劇的に下がっている現在、お互いに納得できるのであれば新婚からの週末婚も成り立ちやすいのかもしれない。

「若いうちは無理だったと思います。私は精神的に不安定だったので、彼に依存して縛ろうとしてしまったでしょう。結婚してもすぐにケンカして別れていたはずです。40代の今は『精神的にも経済的にもダンナさんに頼らないのが当たり前』という感覚ですね。ダンナが心の支えではありますが、お互いの生活を尊重できている気がします。それぞれ会社の定年まではがんばって働いて、老後は広島あたりで住もうと話しています。関東と九州の中間地点だし、私は広島カープのファンだからです」

熊本地震で感じた、遠距離婚の不安

問題がないわけではない。LINEでは頻繁にやり取りしていても、実際には近くにいないという寂しさは残る。そして、別居婚のデメリットが際立つ事態が発生した。今年4月の熊本地震だ。被災の映像を見て心配が増幅した宏美さんは、「とにかく熊本から出て。死んだらおしまいでしょう!」と電話口で絶叫してしまった。一方で、現地にいる幸一さんは仕事を続け、半壊した同僚の自宅を直す手伝いをしていた。

あまりの温度差に困惑した宏美さんは激怒。「震災離婚」をしそうだったと振り返る。幸一さんの身を案じていればこその怒りではあるが、生活の場をともにしていない場合はこのようなすれ違いがありうるのだ。

幸一さん自身は大きな被害を受けることなく、現在も熊本での一人暮らしを続けている。危機を乗り越えた2人は、今まで以上に広い心でお互いを受け止められるようになったようだ。

「年貢の納めどき、なんていう気持ちで結婚しましたが、今ではダンナと結婚して本当によかったと思っています。私の一番の理解者で、いろんなことをやりたがる私を受け止めてくれる人です。例えば、このインタビュー。『なんでそんな取材を受けるの』なんて言わない。『自分は受けないけれど、お好きにどうぞ』という姿勢でいてくれます」

そう言いつつ、インタビュー場所の和食店で出された料理をスマホで撮影する宏美さん。LINEで幸一さんに送って「こんなおいしいものを食べたよ」と自慢したいのだという。幸一さんは好奇心と行動力を併せ持つ宏美さんを面白がり、可愛らしい人だと思っているのだろう。

性格が異なりつつも理解し求め合っている2人。里親を志したきっかけは、夫婦で参加している反原発デモだった。

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