「子は持たない」を条件に結婚した夫婦の選択 「標準家庭」像に縛られないことの"自由"

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標準的な家庭像に縛られない幸福な夫婦がいます(イラスト:堀江篤史)

品川駅から10分ほど歩き、マリオットホテルに着いた。モダンなデザインの建物には商用らしいスーツ姿の欧米人が多く、非日常な雰囲気が漂う。ヨーロッパの空港にいるような気分を味わえる。

色鮮やかなボーダー柄のワンピースがよく似合う武藤史江さん(仮名、44歳)は、ファッション業界で働きつつ、年に6回も女友達との海外旅行を楽しんでいる晩婚さんだ。ホテルのラウンジでアフタヌーンティーをしながら、史江さんの恋愛・結婚ストーリーを聞こう。

若い頃にあった「やや偏った好み」

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「夫とは、新卒で入った会社で同じ部署だったのが出会いです。細かくて口うるさいという評判だったので苦手意識がありました。ファッションセンスは著しく悪い! 私の5歳年上だから、彼は当時27歳です。それなのにザ・ゴルフファッション。恋愛感情はまったくありませんでした」

夫の友彦さん(仮名、49歳)の第一印象が悪かったと言い切るのは、現在は深い信頼関係と愛情で結ばれている証拠かもしれない。ただし、史江さんにはやや偏った好みがあったことも影響している。

「若い頃はフランス映画やアートにすごくかぶれていました。映画を1日3本も見ていたほどです。好きな男性も完全にアート系。美大卒とかデザイナー、建築家だと聞くと一発でクラクラしちゃっていました」

友彦さんは現在も同じ会社で働き続けているが、史江さんはすぐに同業他社に転職。もともと縁が薄かった2人はほぼ他人になった。史江さんはアート系の男性たちと恋愛をし、30代の8年間は2歳年上のファッションデザイナーの康文さん(仮名)と付き合っていた。そのうち6年間は同棲だったという。

「結婚する話も出ていましたが、彼は仕事が忙しすぎました。土日もほとんどなくて、昼夜も逆転したような生活です。たまの休みに一緒に映画を見に行っても、終わったら仕事に戻ってしまいます。それなのに、私の年齢を気にして子どもを早く作りたがりました。私自身は子どもが苦手で、できれば欲しくありません。結婚して子ども作ることを考えるとしても、2人の生活を確立することが先でしょう。デートもろくにできないし、家事もまったく協力してくれないのに、子育てなんて夢物語だと思いました。何度も何度も話し合ったけれど、彼は働き方を変えようとはしません。ダメでしたね」

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