「子は持たない」を条件に結婚した夫婦の選択 「標準家庭」像に縛られないことの"自由"

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もうひとつ、史江さんが晩婚で満足している理由には、「子どもは作りたくない」という価値観がある。出産と子育てを考慮に入れないのであれば、結婚はいつでもできる。

「夫と結婚をするときに挙げた唯一の条件は、子どもは作らないことを夫の両親にちゃんと納得してもらうことでした。結婚した後で(両親などからの子作りプレッシャーで)大変な思いをしている女性が私の周りには多かったからです。彼自身は『もっと若い頃だったら子どもがいてもよかったけれど、この年齢だからもういらない』と言っていました。両親はちょっと寂しそうな顔をしたけれど理解してくれたそうです」

子どもに関する見解は、「結婚したらどこに住むのか」と同じぐらい重要なテーマだ。我々晩婚さんには「とりあえず新婚生活を楽しんでから先のことを考える」という時間はない。

(1)子どもは作らない

(2)できたらいいけれど、自然妊娠でできなければあきらめる

(3)不妊治療を受けてでも作る

この3選択肢のどれを取るのか。少なくともその程度の共通認識は持ってから結婚したい。ちなみに筆者と妻は(2)を選んだ。史江さんと友彦さんは(1)だ。

結婚してもっと自由になった

いま、史江さんは友彦さんとの結婚生活に大いに満足している。「一人暮らしも自由で楽しかったけれど、2人になってもっと自由になった」と史江さんは言い切る。

史江さんが大好きな弾丸トラベル(車中もしくは機中泊の短期旅行)に出かける際は、夜中や早朝でも空港まで車で快く送り迎えをしてくれる友彦さん。料理や洗濯も得意な男性で、史江さんの家事分担は週末の掃除のみだ。

友彦さんは史江さんに義務感で尽くしているわけではない。日常生活での細々としたことが好きな男性もいるのだ。史江さんの友達と一緒に遊ぶことも多く、友彦さんは「世界が広がった」と喜んでいる。

「前の会社にいたときは苦手だと思っていた夫の細かい性格は、一緒に住むのにはすごく助かるものだったんです(笑)。私はかなり大雑把なので……」

史江さんが弾丸トラベルに行っている間は、友彦さんは趣味のゴルフなどに熱中している。2人で海外旅行に出かける際は、お互いがかつて訪れたり住んだことのある都市を案内し合っているという。

1人でも自由だったけど結婚してもっと自由になった――。史江さんと友彦さんの家庭はいわゆる「標準家庭」ではない。しかし、幸せな家庭のひとつに違いない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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