ダイソンが独創的な製品を編み出せた理由 創造とは何もないところからは生まれない
筆者は、個人的には「日本で最もイノベーティブな業界」はサービス産業ではないかと思っている。飲食店、ビジネスホテル、アパレル、コンビニと、多くの業界ではどんどん新しいサービスが生まれている。特にここ10年は、コンセプトが明確な、他社とは違った切り口を打ち出す企業が最大手を相手に健闘し、成長している。
たとえばビジネスホテル業界。「スーパーホテル」は、客室・ロビーは狭く、人員や設備も少なくしてコストを節約する半面、「快眠」という部分に金を思い切ってかけ、高級マットレスや防音構造の壁を採用した結果、5000円前後の低価格ながら顧客満足度の高いビジネスホテルとして知られるようになった。「ドーミーイン」は客室にはシャワーしかないが、大浴場が非常に充実していて、風呂好きのビジネスパーソンの人気を呼んでいる。
また、サービス産業に次いでイノベーティブな業界は、文房具業界ではなかろうか。海外に比べて、日本は文房具のワンダーランドだ。消せるボールペン「フリクション」、芯が折れないシャープペンシル「デルガード」、針のいらないステープラー「ハリナックス」など、日本では、これまで不可能と思われたことを実現する文房具が次々と発売されている。
日本に住んでいると、日本の文房具のすごさに気がつかないかもしれない。しかし、欧米では、文房具は主に「コモディティ化された安物」と、超高級ペンなどの「ブランドもの」の両極端に分かれており、日本の文房具メーカーのようなイノベーティブな商品はほとんど見られない。
本当はイノベーションが得意なのでは
「日本人は、改良は得意だがイノベーションが苦手」など、やや自虐的な言説も聞かれるが、こんなにすごい商品やサービスを生み出す日本人は、本当はイノベーションが得意なのではないだろうか。そして、そのイノベーションのための「発想力」を高めるのに役立つのがアナロジー思考なのだ。
イノベーションはまず顧客の「困り事」や「顕在化していないニーズやウォンツ」を発見することから始まる。これがなければ何も始まらない。ジェームズ・ダイソンが週末に自宅の掃除を担当していたことは、のちに世界的な発明のきっかけとなったわけだ。
そうした困り事を解決したり、「こんなことができたら素敵だな」という夢を妥当なコストで提供したりできれば、当たり前だがヒットすることは間違いない。しかし多くの場合、こうした問題を解決しようとすると、コストや技術の壁など、別の悪影響が出るという問題があり、なかなか実現できない。
そのときに役立つのが「この問題をすでに解決している別の商品やサービスはどこにあるのか」という発想だ。そのためには、まず自分の抱えた問題を「抽象化」し、抽象レベルで同じ構造を持つ問題を解決した業界・商品・サービスを「発見」できれば、アイデアを借りてくることができるのである。
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