トヨタとマッキンゼー、強さの根源は同じだ 基本中の基本、PDCAを極められるか

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では、あるべき組織のPDCAがいかなるものかを理解するために、優良企業のPDCAを見てみましょう。まずは、日本を代表するトヨタ自動車に触れないわけにはいきません。

トヨタとマッキンゼーのPDCA

トヨタ自動車は自動車業界において、コスト、デリバリー(企画から生産開始までの時間、あるいは、製造のためのリードタイム)、品質という、製造業として競争力の源泉となる三大要素を永続的に高めていくPDCAを回している、実践力追求型の企業です。

トヨタのPDCAのエッセンスを簡潔に表現するならば、「まず現場レベルで、現状の課題、問題点について、適切な『見える化』を徹底する。そしてその『見える化』の仕方の工夫に知恵を使う。そこから見えてきた差異、異常値について、その理由を『5回のなぜ』を基本に追求し、真因を探し出し、真因に対策を行う。その対策がうまくいったら横展開し、全社で使いこなしていく」ということになります。

このトヨタと対極にあるように見えるのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーです。欧米の企業では、取締役会から指名された最高経営責任者(CEO)たる社長が、事業立て直しや企業価値向上のための精度の高い戦略を短期間で手にするために、マッキンゼーのような戦略コンサルティングファームを使います。その戦略をもとに、欧米のCEOはトップダウンで自らディレクティブにPDCAを回して采配を振るっていきます。

マッキンゼーは戦略立案に際して、「フレームワークを使った分析を行い、ファクト(事実)ベースで事の因果を明確にする。課題・問題を明確にし、解決策を策定したうえで、経営トップに向けに戦略提案を行う」サービスを提供します。

表現の仕方は違えども、実は両者は、同じアプローチで方法論を開発、展開し、問題発見、問題解決に取り組んでいます。たとえば、マッキンゼーで使われているロジックツリーは、トヨタではTQCに端を発する特性要因図の形で使われています(この類似性についてはのちほど、説明します)。

トヨタは、現場で使い、問題解決の精度向上を目的としていますので、たとえばMECE(ミーシー、「もれなくダブりなく」の意)についてはさほど神経質にならないなど、現場で使いやすいように問題発見の考え方や実践方法をつねに磨き上げ、向上させています。

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