東大が入試に全力を注ぐのにはワケがある 日本の高校生全体に伝えたい「思い」
──推薦入試では、どんな学生を求めているのですか。
高校在学中に特定の領域に没頭して卓越した実績を上げている人は、ペーパーテストの総合点は高くならないかもしれませんが、研究や学生生活でも独創性を発揮できる。これまで、そういう人を取りこぼしていたのではないか、そういう人が入学することで大学がより活性化するのではないかという期待があります。
推薦入試には、日本の中等教育の先進的な取り組みを支援する意図もあります。卒業研究などの探究的な学習に力を入れている高校もあります。そういう教育の成果を推薦入試では評価したい。
──学ぶ意欲も重視しているのでしょうか。
意欲だけを取り出して評価することは難しい。志願者には、(論文や研究成果のように)特定の領域への強い関心やモチベーションを評価できる形で示してもらう必要があります。
高校の学習を「本わかり」すれば解ける問題
──記述式が中心の一般入試は、変えない方針でしょうか。
現時点では変えることは考えていません。東大の入試の在り方について否定的な声は学外からも学内からも聞こえてきません。高校の各教科で習う内容を「本わかり」、つまり本当に深く理解すれば解けるように、難しい用語は出題しないなど、高校教育に配慮しながら作問をし、そして時間をかけて採点をしています。
──「本わかり」とはどのようなものですか。
本質的な理解を示します。「要するに何なのか」ということを自問して答えられることです。
「知識」という言葉は矮小化されがちですが、機械的な暗記は知識ともいえないものです。「本わかり」を伴う知識は、高く深いレベルのものです。それは、探究活動を通じて身に付くこともあるし、本やネットで、ということもある。知識を深めるにも多様な方法があります。
──東大の一般入試でも「本わかり」を問うているのですね。
東大のアドミッションポリシーに、入試の基本方針として「知識を詰め込むことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視」するとあります。これは、高校の学習を「本わかり」するように取り組んでいれば解ける、ということです。
加えて、(15年に就任した)五神真総長は、「自ら原理に立ち戻って考える力」「考え続ける忍耐力」「自ら新しいアイディアや発想を生む力」の3つの基礎力を鍛えることを求めています。これらは、高校での学びにも通じることだと思います。