東大が入試に全力を注ぐのにはワケがある 日本の高校生全体に伝えたい「思い」
答案と向き合う中で採点基準が決まる
──五神総長が文部科学省の会議に出した意見書には、「記述式試験は受験生との対話」とあります。どういう意味でしょうか。
2つの意味があります。まず、出題が大学からのメッセージであり、それに解答するという対話です。格闘しがいのある問題を出し、それにチャレンジしたいという生徒を歓迎するということです。入試で問われている力は、大学の学習で必要なものです。入試を通じて、高校と大学は接続しているのです。
もう一つ、採点の過程が対話なのです。私が授業で実施する統計の試験でも、いくつかの解を想定して作問したとしても、採点を始めると、より良いスマートな解が学生から出たり、逆に思ってもいない誤りが出たりすることもあります。完全な正解ではない解を比較して、「どちらが良い解か」を決める中で順番付けがはっきりしていきます。こうして、採点するうちに基準がより明確になっていき、何を測っているのかが確定していくのです。
(一般入試では)その作業が、何千人かの受験生の答案を通してのやりとりになります。もちろん初めから基準はあるのですが、採点をするうちに「さっきの答案は、良いじゃないか」と戻って見直すこともある。こうして基準が洗練されていく過程が、受験生との対話のようなやり方になっているのです。
センター試験があるから安心して記述式を出題できる
──アドミッションセンターを設置することを計画していますね。何に取り組むのでしょうか。
高大接続センター(仮称)を設置します。これまで入試の追跡調査は、入学後の学業成績を定量的に見ていましたが、推薦入試での入学者の追跡の物差しは多様にしたい。学業成績だけでなく、面接も含めて定性的な追跡を丁寧にして、今後の入試や教育の企画に生かします。
また、国や国立大学全体の入試改革の動きをふまえてどうするか。東大の個別試験の評価は高いですが、(外部の)状況が変化したら、今のままでいいのかという検討はしないといけない。そのための専門的な人材を置くことを考えています。