東大が入試に全力を注ぐのにはワケがある 日本の高校生全体に伝えたい「思い」

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──委員を務めた、文科省の高大接続システム改革会議の最終報告はどう見ていますか。会議に総長が出された意見書からは、「センター試験廃止」への懸念が感じられました。

高大接続改革が今後どう動いていくのかが、最終報告でもはっきりしていません。新しいテストの科目をどうするか、という議論すら十分にはされなかった。新しいテストは、目的と手段が乖離している部分があり、この最終報告に納得している人はほとんどいないのではないか。心配です。

センター試験が、50万人以上が受験する規模で構築・運用されながら、問題内容への批判がほとんどないのは上出来だと思います。今は「センター試験廃止」という言葉が一人歩きしている。総長が言うように、センター試験の「資産価値」を大事にして改善すべきところを改善するという慎重姿勢が必要です。

(センター試験の後継とされる)「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、記述式を入れるとしていますが、東大入試のような「深い記述式」とはだいぶ違い、設問条件を満たしているかどうかの表面的・機械的な採点を想定している。にもかかわらず、「深い記述式」であるかのように、「思考力・判断力・表現力」を評価すると言っている。これも乖離です。

選択式には、幅広く、多くの内容について効率的に試験できるという良さがあります。東大は、選択式のセンター試験を一次試験にしているから、安心して二次試験で内容を絞った「深い記述式」を出題できているのです。(聞き手:西健太郎)

 

南風原朝和(はえばら・ともかず)1953年、沖縄生まれ。那覇高校、東京大学教育学部卒業。アイオワ大学大学院教育学研究科博士課程修了。Ph.D. 東京大学大学院教育学研究科教授、教育学部附属中等教育学校長、教育学研究科長・教育学部長などを経て2015年から現職。文部科学省の高大接続システム改革会議委員を16年3月まで務める。専門は心理統計学・心理測定学。

 

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