化学はニッポンを見放した 主要メーカーが国内生産を次々と撤退、縮小
住友化学は国内の化学業界で売上高2位、宇部興産は同10番手前後に位置する。エチレンは石化産業のおおもととなる製品。宇部興産はカプロラクタムの世界的なメーカーだ。日本を代表する化学メーカーが相次いで、主力品の国内生産を撤退、縮小すると表明した事実は、「偶然」の一言では片付けられない。特に日本経団連の米倉弘昌会長が会長職に就く、「日本企業の象徴的な存在」ともいえる住友化学が決断した意味は重い。
共通するのは、熾烈化する国際競争の中で起きた構造的な変化に対応するという判断だ。
現在、国内では計10社が各地のコンビナートで計15基のエチレン設備を運営する。これまでもエチレン設備を廃棄したり、共同運営に切り替えたりした例はあったが、日本の石化産業史においてエチレンの国内自社生産から事実上、手を引くのは住友化学が初めてとなる。
「過去の思いは断ち切る」
「グローバルにやっていくということで、過去の思いは断ち切る」。2月1日。東京都内で会見した住友化学の十倉雅和社長はこう述べた。千葉工場は、日本の石化産業の黎明期となる1970年に操業を開始。住友化学は「マザー工場」と位置づけてきたが、「40年以上を経過してエネルギー効率や保守費用の面など競争力が低下している」(十倉社長)。
日本の石化産業は、海外勢の台頭に苦戦中だ。石油化学工業協会によると12年のエチレン国内生産は、前年比8%減の614万t。2000年以降最低で、リーマンショック後の08~09年をも下回った11年を、さらに割り込んだ。バブル崩壊後の水準とほぼ同等となる。