では、映画として「どう見せるか」。この点がもうひとつの苦労ですね。今作ではドキュメンタリー作品にもかかわらず、何を撮影して編集するかという「構成台本」をつくっています。映像の素材自体も膨大にありますし、登場人物も何人もいる。誰を中心にして、どういうアングルで誰の視線から物語を組み立てていくか、そういうところに注意を払っています。
――作中にはメンバーのインタビューも多く収録されています。信頼関係を築く秘訣はありますか?
メンバーのインタビューは多く差し込まれています。長らくミュージックビデオなどを撮ってきましたから、そこで培われた信頼関係というものもあると思います。
AKB48の組織論
――AKBというのは非常に組織的なグループのように感じます。
私は映画監督ではありますが、企業に属するサラリーマンでもあります。私のサラリーマン経験から見ても、AKB48は非常に組織的だと思います。ですから今回の作品は、従来からのファンではない、一般の社会人にも共感してもらいたいんです。AKB48というグループは、私たち社会人の属している組織と似ているところがたくさんあります。
たとえば、初期メンバーは会社で言うと創業時のメンバー。まだまだ世間の認知もブランド力もない、だからAKB48を通じて自分の夢をかなえたり自己実現を図ったりというのが一義的な目標でした。でも今みたいに社会現象化してくると「メンバーになること」を目標に入ってくるメンバーもいる。
会社で言えば、ブランド化して新卒を大量に採用するようになったという感じ。ですから新しい組織を担うリーダーに求められるのは、現状維持ではありません。今まで作り上げてきたブランドをさらに強くして当然、という高いハードルが設けられることになるでしょう。
――組織ということでは新陳代謝はうまくいっていると思いますか?
組織的と言いましたが、決して動きが鈍い旧態依然とした組織ではないと思います。新陳代謝は非常に活発です。いい例が「組閣」という新たなチーム編成です。今回の組閣では高城亜樹さんや宮澤佐江さんといった人気メンバーの海外移籍も発表されました。加えて、チーム4が解散になり、A、K、Bの3チームに再編成されました。当時は組織内で大きな波紋を呼びましたが、結果的にはメンバーのダンスも歌もよくなっている。いい組織変更だったと思います。