AKB48も会社も、中間管理職が一番大変 高橋栄樹監督に聞く、AKBの組織論

ＡＫＢ48のメンバーは求道者

――特に今回は前田敦子さん以外にもほかのメンバーの脱退も多くありました。そういうところはどうお考えでしたか？

非常に奇異に聞こえるかもしれませんが、これは宗教と似ているのではないかと思いました。AKB48のメンバーは「アイドル道」という厳しい道の求道者です。すべてを捨てなければセンターのポジションには到達できません。年頃の女の子にある「恋愛」や「異性との交流」という欲求を断ち切らなければならない。そういう意味では、尼僧の世界と似ているな、と思いました。

だからといって、脱退を余儀なくされたメンバーのことをダメだ、というふうには描きたくなかったんです。そのメンバー達は、個人的な道を選んだのでしょう。それはそれでひとつのAKBメンバーとしてのあり方だと思います。

――劇中メンバーが泣いているシーンが多いように感じました。

そうですね。華やかなAKB48の舞台裏では涙は確かに多いです。でもアイドルや芸能界に限らず、社会で何かを成し遂げようとすることは非常に厳しいものだ、というのを伝えられればと思っています。今までのアイドルの映像というのは、華やかなところばかりがクローズアップされて、厳しいところや苦労しているところはあまり紹介されてこなかった ように感じます。でもアイドルを極めるということはそう簡単な事じゃない。もっと言えば、社会でひとつのことを極めようとしたら、それくらい大変だということを伝えたいなと思っています。

――さら成長を続けていくAKB48、今後はどうなるとお考えですか。

私には想像がつきません。ただ、AKB48がクールジャパンのコンテンツの一翼として認知されるところまでいくかもしれないとは、考えます。アニメや漫画に並ぶ「アイドル」というジャンルとして世界、特にアジア圏に輸出できればAKB48はさらなる発展を遂げるのではないでしょうか。

（撮影：梅谷秀司）