オーストリアの大統領選は「史上初」だらけだ 憲法裁判所が選挙のやり直しを命令

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写真右が僅差で大統領選に勝利したリベラル政党「緑の党」出身のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏、左が自由党のノルベルト・ホーファー氏。「再選挙」という異例の事態になった(写真:ロイター / アフロ)
5月に行われたオーストリア大統領選を巡り、敗北した自由党が選挙の無効を訴えていたが、憲法裁判所は7月1日に申し立てを認め、選挙のやり直しを命じた。いったいオーストリアで何が起きているのか。7月6日発売の『GALAC』最新号に掲載された現地からのリポートを、補足してお届けする。


「南部の国境に壁を作って移民を入れない。人々の安全を守るのが、大統領の仕事だ!」――。どこかで聞いたような演説だが、これはアメリカのトランプ候補の発言ではない。中欧の小国、オーストリアの極右候補のセリフだ。

オーストリア大統領選のポスター

世界中のメディアが、人口850万の共和国に注目したのは4月。同国の大統領選挙で極右政党のノルベルト・ホーファー議員(写真左端)が、与党候補を大きく退けトップの座に躍り出たからだ。選出されれば欧州で戦後初の極右大統領が誕生してしまう。得票が過半数に至らず決選投票となり、連立与党の候補(写真中央の二人)はいずれも惨敗。極右候補と難民保護を訴える左派候補アレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏(緑の党元党首・写真右端)の一騎打ち、まさに水火の争いとなった。

欧州連合(EU)不信

『GALAC』8月号の特集は第53回ギャラクシー賞の詳報です(上の書影をクリックするとブックウォーカーのサイトにジャンプします)

争点は、昨年から増えた難民・移民問題だ。犯罪やテロ、失業率増加への不安から、移民排斥感情が高まっており、墺政府も年初に難民受け入れの上限枠を設けた。しかし低階層を中心とした市民の不満は収まらない。自分たちの救済に充分な手当てがなく、難民には血税が使われると反発。極右候補支持の背景には、ギリシャ金融危機支援の負担増などの経済問題があり、人々の欧州連合(EU)不信にも繋がっている。

地元メディアは移民排斥を掲げる極右が健闘することを指摘していた。予想できなかったのは、支持率が直前の世論調査結果(2位23%)を大きく上回る36%にまで躍進したことである。

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