オーストリアの大統領選は「史上初」だらけだ 憲法裁判所が選挙のやり直しを命令
自由党は若者の支持者が多い政党だ。ホーファー氏はフェイスブックで1日平均8回の情報更新を続け、決選投票直前のファン数は18万人と、ライバルのファン・デア・ベレン氏を6万人分引き離している。しかし、クーリエ(全国紙)によると、フェイスブックでのやりとり(ライクやシェア、コメント)の数では、ファン・デア・ベレン氏が32万を獲得して逆転していた。
効果的だったのは、元副首相などの大物与党議員や有名人がフェイスブックでファン・デア・ベレン氏を支持して話題を作ったことや、ツイボンで作った支援バッジを支持者がフェイスブックやツイッターで拡散させたPR戦略だ。インスタグラムでの両候補のエンゲージメント度でも、ファン・デア・ベレン氏が9対1で圧倒的に勝っている。ネットの世界では勝負がついていた。
今回は浮動票の取り込みが勝敗の決め手になり、家族や友人を結ぶソーシャルメディアがこれまで以上に、影響力を持ったのである。
全ての決戦投票のやり直しという事態に
さて、決選は大接戦となり、左派のファン・デア・ベレン候補が極右の台頭を嫌う層の支持(48%)を獲得。投票日の開票では劣勢だったが、翌日の不在投票の集計で大逆転を果たし、約3万票の僅差で大統領の座を手にした。
負けたはずの自由党だが、不在者票の事前開封、二重投票があったなどとして提訴した。事前開封には自由党の党員も加担していたのだが、結果を覆せるのであれば体裁などお構いなしだ。憲法裁判所は、7月1日に一部の地区で手続違反があったとし、全ての決戦投票のやり直しを命じた。選挙では少しのミスも許されないという判断だ。
地元メディアにもお灸がすえられた。全ての投票所が閉まる前に開票状況がリークされ、ソーシャルメディアで流れ始めたことを受けて、オーストリア通信が「ホーファー氏優勢」のフライング報道をした事が、自由党の提訴理由にあったのだ。たとえ数分前の事であっても違法だとされ、これまで内務省が「解禁」条件付きで大手メディアに共有していた開票情報の共有を禁じている。何十年も続いていた紳士協定も、「悪しき慣習」とされたのだ。
「3度目の正直」と言うが、10月2日に行われる投票で今度こそ決着がつくことになる。この間ドーバー海峡の先で発生した台風・Brexit(イギリスのEU撤退投票)のマイナス影響も気になるところだが、夏を越した後の接戦投票で問われるのは、両陣営のスタミナだろう。判決前に行われたギャロップの世論調査では、64%がやり直しに反対であった。これまでのパターンでは、投票率が下がれば自由党有利になっている。だが、今回の大統領選挙は最初から例外続き。オーストリアからは、まだまだ目が離せない。
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