オーストリアの大統領選は「史上初」だらけだ 憲法裁判所が選挙のやり直しを命令

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オーストリアでは、16歳から投票権がある。若者への世論調査が難しかったほか、都市と地方で投票傾向の差がありすぎたようだ。この反省から、主要メディアは前例に従わず、決選投票前の世論調査の結果公表を控えた。では、有権者はどのように大統領を選んだのだろうか?

候補者はいろいろな形でテレビ出演の機会が与えられる。ニュースキャスターとの対談(録画)、候補者がそろって出演する生討論会などだ。1回目の選挙でトップになったホーファー氏は最年少45歳で、最もフォトジェニックな候補だ。美男子は得なのだが、テレビで有利に働いたのは彼の語り口だろう。

自由党は現政権の政策を常に批判して反政府票を集めているが、その攻撃性を警戒する人も多い。しかし、笑顔で答えるホーファー氏の口調には糾弾トーンがない。ダメな政府のお目付け役となりオーストリア人を守ると、ソフトに擁護者像をアピール。「自由党らしくない」ところが支持基盤を広げた。

ソーシャルメディアがもたらした影響

選挙番組でも史上初がある。決選投票の1週間前に行われたテレビ討論会では、司会者無しで両候補を机越しに座らせ、議題を一切決めずに「フリー討論」させた(民放ATVが実験として企画・放映)。おりの中にライオンと虎を入れるようなもので、この時ばかりは互いが「嘘つき」「上流気取り」と悪態をつき、翌朝の新聞では「園児の喧嘩並み」、大統領職の品格を下げる「史上最低の討論会」と酷評された。他方、視聴率は18%を超え、ATVの最高記録を達成。人々の関心の高さも示されている。

「ホーファー候補は極右なのか」「自由党の大統領が誕生したら、国は欧州から孤立するのではないか」など、お茶の間や職場などでさまざまな議論、言い争いが巻き起こった。友人から日本人の私にまで、極右台頭を阻止するために対立候補に投票するようメールが届いたのだ。こうしたなか、フェイスブック等のソーシャルメディアがもたらした影響は大きい。

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