楽園企業は「改善提案」だけで25万円もくれる 中身は不問!さらに「高額報奨金」も!

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「社内提案制度」に込められた社員のヤル気を引き出す「3つの山田マジック」を、山田語録とともに紹介してみたい。

社員が目標以上の結果を出す「山田マジック」 

① 「提案を考えることで、業務の細部に目配りする力がつくんや」

「最初は、自分で考えたことを文章にまとめる訓練と思えばいい」と生前の山田氏は話していた。「そのうち自分の業務の細部に目配りする力が、少しずつ身についてくるもんや」

1件の提案を書くのは簡単ではない。それゆえに、「提案をする」という前提で日々の業務を観察することで、自分なりに「改善を考える」習慣が身につくのだ。

② 「最初から、いい提案なんて出てこん。まずは『質より量』を優先すべきや」

「社内提案制度を導入したけど、いい改善提案がなかなか出てこない」とこぼす経営者がいる。それに対して山田氏は「いきなり質を求めるのは欲張りすぎや」と説いていた。

「最初は『100件考えて、いい提案が1つ出る』程度。経営者はそれぐらいの悠長さと謙虚さが必要。まず『質より量』を優先させるべきなんや」

仕掛けたら悠長に待つ。その「動と静のバランス」が山田マジックの真骨頂だ。

③「社員に『モチ』を与えるから、『モチベーション』が上がる。『アメとムチ』ではなく『アメ・アメ・アメ』だから社員は一生懸命、働くんや」

未来工業本社は、トイレからオフィスまで「改善提案実施箇所」シールが目につく。「常に考える」という社是(会社の基本方針)と、英語の「Idea」がヒト型にデザインされていて、提案者の名前が添えられている。

「人をヤル気にするものを、ウチでは『モチ』と呼んどる。報奨金以外でも、自分の名前が提案者として貼り出されるのも『モチ』のひとつ。『いろいろなモチ』を与えて、社員のモチベーションを上げていくわけやな」

こうした山田マジックが、社員たちのヤル気と結びついてきたからこそ、「日本一“社員”が幸せな会社」が生まれていった。山田氏のトップダウンから、社員によるボトムアップ型へ。提案制度の歴史は、同社が組織として変貌していった軌跡でもある。

あなたの職場はトップダウン、ボトムアップ型のどちらだろう? 日々の業務を「流れ作業」にせず、あなたはどれだけ注意深く観察し、改善点を見つけ、実行できているだろうか。

あなたの会社はいったい、あなたにどんな「モチ」を用意しているか。そこに、会社の「社員に対する哲学」が凝縮されている。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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