会社員を苦しめる残業やノルマをやめた会社
山田昭男氏が創業した未来工業は、「社員が日本一幸せ」な楽園企業として有名。1日の就業時間は7時間15分で、残業禁止が原則。休みが日本一多いといわれ、5年ごとに会社負担で海外に豪華社員旅行と至れり尽くせりだ。
そんな未来工業の本社を初めて訪れたとき、筆者がまず驚いたことがある。それは会社の入り口に「警備員室」があるのに、「警備員が誰もいない」のだ。
「なぜ警備員がいないんですか?」と山田昭男氏に聞いたところ、「どうせ盗られるもんなんかないしな」と冗談混じりにつぶやいてから、こう言い放った。
「警備員を置くと、人件費が年間いくらかかると思う? それと泥棒に入られて取られる金額と、どっちが大きいと思うんや?」
そんな発想をする経営者は、日本中を探してもめったにいない。警備員だけに限らない。「仕事の効率が悪くなるから」と会社全体で「残業」をやめたり、「自分の頭で考えなくなるから」と、「営業ノルマ」や「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も、同社はやめてきた。
「いまどき残業や営業ノルマをやめた会社が、ホントに儲かるのか?」と不審に思う人も多いはずだが、創業以来50年間赤字決算はゼロで、好業績を継続中だという。未来工業が儲かり続ける秘訣は、この「やめる力」にこそある。
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