公取が"注意"したキヤノン「灰色買収」の全容

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スキームの内容は明らかにされていないのだが、TMSCの法人等登記謄本や東芝とキヤノンの臨時報告書をつきあわせると、全貌が見えてくる。

東芝は巨額赤字で債務超過転落の危機にあり、3月末までにTMSC株の売却益を計上したい。一方のキヤノンは成長事業の獲得のために、TMSCを買収し完全子会社化したい――両社の要求を実現するために、法律の専門家など複数関係者が考案したのが、以下の複雑な買収スキームだ。

公取が注意した複雑な買収スキーム

第1段階(3月9日):入札の結果、キヤノンがTMSC買収の独占交渉権を東芝から得る。これに先だって、MSホールディング(以下MSH)を同8日に設立。

第2段階(3月15日):TMSCの普通株(1億3498万0060株)をすべてC種類株に変更。

第3段階(3月16日):TMSCは議決権のあるA種類株20株、議決権のないB種類株1株、新株予約権100個を発行し東芝に交付。それらと引き替えに東芝はC種類株をすべてTMSCに譲渡。

ここまでが準備段階である。翌日に現在の状態に移行した。

第4段階(3月17日):東芝がTMSCの売却を発表。B種類株1株と新株予約権を6655億円でキヤノンに譲渡。同時に、A種類株20株を9万8600円でMSHに譲渡。これらにより、TMSCの議決権は東芝から離れてすべてMSHに移行した。

日本をはじめとした競争法の審査がすべて終わることが、新株予約権の権利行使の条件となっている。

審査がすべて終わると、TMSCはMSHからA種類株20株を3600万円で、B種類株1株を4930円で買い取ることになっている。A・B種類株はTMSCにとって自己株なので、議決権を持たなくなる。

そのうえで、キヤノンが新株予約権100個をすべて行使し、TMSCを完全子会社化する――これが図の第5段階である最終形だ。

焦点となったのは、MSHのキヤノンからの独立性である。

MSHは売上高ゼロなので、独禁法上の審査(クリアランス)をせずにTMSCを完全子会社化できる。これにより東芝は売却益を3月末までに計上できる。

しかし、MSHにキヤノンからの「独立性」がなければ、キヤノンには医療機器部門の売上高が200億円以上あるので、キヤノンがクリアランスを申請しなければならない。そしてキヤノンがクリアランスを関係国すべてで終了するまで、東芝は本来の目的である売却益の計上ができない。

独立性とは何か。

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