リアル書店は不動産屋に
それでも改革開放以来、中国の民間出版市場は拡大に次ぐ拡大を遂げてきた。その出版市場が、ここにきて急速に縮小しており、少ないパイを巡って、オンライン書店では値引き合戦が激化している。書籍が定価販売の日本では考えられないことだが、小売りに関しては中国のほうが自由経済ということなのだろう。
この値引き合戦にたまりかね、10年1月に新聞・出版総署は、発行から1年以内の新刊価格を原価の85%以下にしてはならないとの制限令を出した。しかし、こうした規制もすぐに有名無実化し、いまも値引き合戦は続いている。
現在、中国のオンライン書店では、2割引きは当たり前で、4割くらいまで引くこともある。出版社側はこうした割引を見越して、そもそもの定価を2、3割上げる傾向にある。これがさらに書店離れに拍車をかけているという。
先の書店関係者はこう言う。
「ネットもある、海賊版もある、という中で、もう紙の出版はもたないと思います。政府も、まずは国営書店と国営出版社の生き残りを優先しています。中国には、業界全体として、書店と流通に責任を持つ存在がいないので、この先どうなるかわかりません」
中国のリアル書店の崩壊を象徴しているのが、中央電視台も批判した国営書店の新華書店の現実だ。新華書店は全国に約3000店あるが、そのほとんどがすでに書店としては機能していない。場所が繁華街の中心地にあるため、貸店舗や看板広告などで収入を得ている。つまり、書店ではなく、事実上の不動産屋となっているのだ。
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