中国で「紙」が大ピンチ。書店が続々倒産中 中国の出版市場で何が起きているのか(上)

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私もこれまで中国の書店に何度か立ち寄ったことがあるが、そこでは2種類の本を売っていた。1つは正規版で、もう1つは海賊版だ。驚くべきことに、海賊版も正規版と同じく平台や書棚に堂々と置かれているため、正規版を買う客は少ない。また、正規版しかなくとも、「海賊版はないか?」と店員に告げると、どこからか出してきて売ってくれた。

いまだに中国は海賊版天国で、これは紙も電子も変わりない。

日本とまったく違う中国の出版事情

ここで中国の出版事情を説明すると、出版社の形態から流通まで、日本とはまったく違っている。改革開放以前の中国では、本を出版し、販売できるのは、当然だが、国(共産党)の許可を得た国営の出版社と書店だけだった。出版社も書店もすべて国が経営していた。

市場経済になった現在でも、この形は残っていて、中国では出版はすべて許可制である。新聞・出版総署という出版物を監視・監督する中央官庁から、「書号」を取らないかぎり、書籍は一切発行できないことになっている。つまり、中国では年間の出版点数は決まっている。

中国には現在、出版社が579社あるが、すべて国営であり、日本で言うところの行政法人である。各都市には有力出版グループが存在し、傘下に何社もの出版社を抱える構造になっている。問題となった週刊誌『南方週末』を発行していた南方報業伝媒集団も、広東省所属の国有メディア企業の一つであり、中国共産党広東省委員会の管理下にある。

ただし、こうした国営メディア企業の下に、「文化公司」と呼ばれる民営の編集プロダクションがあり、ここが出版社と組んで書籍や雑誌を発行している。雑誌の出版も「刊号」という政府の許可が必要で、刊号は政府所有の出版社しか所有できないことになっている。

いずれにせよ、このように国にコントロールされている市場なので、ベストセラーのランキングといっても、政府関係の本がみな上位にくる。共産党員は全国に8260万人もいて、指定図書となれば強制的に購入させられるからだ。

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