「売れない営業」は日報を全く生かせていない 売れる宝を発掘するカギは「見える化」にあり

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日報が計画書になり、次回予定まで書くようになってくると、どうしても「顧客の反応」や「競合の動き」を書かざるをえなくなってきます。

実はこの2点、つまり「マーケット動向・反応」を知ることは、会社にとっての最重要課題です。これを最も速くつかめるのは、最前線で動いている営業だけ。これが見える化され、製造部門や開発部門などの各部門に行きわたることで、会社全体で情報共有・連携ができていくのです。

「営業の見える化」で「顧客のニーズ」が見える化

「営業を見える化」することで、「マーケット動向が見える化」されるということがわかりました。さらに踏み込んで、その顧客の「どうしたら買う?」「いつ買う?」「購入の決定権は誰にある?」などの情報がつかめれば完ぺきです。つまり、顧客の「購入の判断基準」をつかむこと。これもまた日報を細かに見ていくことで「見える化」されるのですが、少しテクニックが必要ですので、説明していきましょう。

中国古典の『論語』に、こんな言葉があります。

「子曰く、其の以うる所を視(み)、其の由る所を観(み)、其の安んじる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ痩(かく)さんや、人焉んぞ痩さんや」

これは、「その人物の言動をありのままに見て(視)、その人物がどういうことをしてきた人かを見て(観)、その人が目指す目的や動機を察すれば(察)、人の本性は隠しておけない」という意味です。

この「視・観・察」に沿って、日報を見ていきます。すると、日報に書かれた事実(商談内容や顧客の言動)によって「視」、次回予定を考える際の推察によって「察」し、過去に記録されてきた日報を振り返ることで「観」ることができるのです。

『まんがでできる営業の見える化』(あさ出版)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

こうすることで、ただの日記だった日報が、顧客のニーズや市場動向を知るための最強のツールとなり、営業マンも確固たる目標を持って行動するため、漫然と営業活動をすることがなくなってきます。

「外回りで何をやっているのかイマイチわからない」「会社に戻ってもパソコンの前にずっといる」……こんな「見えない」営業マンたちに、顧客の頭の中を「見える化」してもらうことで、不信感が取り除かれ、「営業マンがいるからこそ、最前線の状況がつかめる」と会社全体の一致団結につながっていくはずです。

長尾 一洋 NIコンサルティング代表取締役/中小企業診断士

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ながお かずひろ / Kazuhiro Nagao

最古にして最強の兵法書『孫子』の智恵を、現代の企業経営や営業活動にどう応用すべきかを説く兵法家であり、経営コンサルタント。『孫子』を単なる中国古典の解説で終わらせず、リアルなビジネスに応用・実践してもらうべく、『孫子』の講座やセミナー講師を多数務める。 『必勝の営業術55のポイント』(中央経済社)、『小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法 経営戦略』(明日香出版社)、『まんがで身につく孫子の兵法』(あさ出版)、『仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる』(KADOKAWA)など多数の著作がある。

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