ファンドの次もファンドを選んだスシロー 回転ずし首位の成長戦略

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マンガのキャラクターやNMB48を使ったPRもするが、いちばん伝えたいのは、「うまいすしを安く食べさせてくれる」店であること。

――外食業界では、スシローはユニゾン傘下になってからメディア戦略が大きく変わったと言われている。

職人気質から、スシローのおいしさは「黙っていてもわかるやろ」と言っていた。でも、黙っていたらわからない。マンガのキャラクターやNMB48を使ってPRもしたが、お客さんがスシローに期待しているのはそこではない。本当に期待していることは、うまいすしを安く食べさせてくれることであり、普通のすし屋に行くのを「止めておこうか」というぐらいのすしを食べさせてくれるということだ。

食べ物も、サービスも皆そんなに変わらない。何が違うかというと、来るたびに商品や店がよくなっているというような驚きがあること。それが楽しい。安さだけで、驚きと楽しさが提供できなければ、続かない。

最近、高級車に乗って来店する人が増えている。お金を持っている人でも「これが100円かい、おいしいな」と驚いてくれる。「おいしいからまた行こう」とはまってくれる。おいしいものを知っている人たちがスシローを支持してくれたことが伸びている一因で、こうした美味しさはちゃんと伝えていかないとわからない。伝え上手になったということはある。

ファンドを変えるのは、トレーナーを変えるようなもの

――今後の成長戦略として2020年に売上高2000億円を掲げている。

日本でやれることはまだまだある。一緒に組んだファンドがどうするかではなく、スシローがどうするかだ。ただ、ファンドからの指摘や圧力はあったほうがいい。ファンドを5年に1回変えるのはトレーナーを変えているようなもの。筋肉と同じで負荷をかけなければ体はデカくならない。

海外は中長期で伸ばしていく。日本が少子高齢化で人口が減ってくるから近々に海外に店を出さなければならないということではない。ただ、10年、20年先の社員のことを考えたとき海外の基盤を作っておかなければならない。

日本での成功をフォーマットにして海外へ展開していくことがカギとなる。11年12月に初出店した韓国は赤字だが、支持は受けている。もう1度仕切り直して、韓国の市場開拓を進めるのが当面の課題だ。

12年中に予定していた上海への出店は、反日デモの影響を考えて、凍結している。外食の場合、メーカーと違って先行者利益がない。後から行っても、よいものをちゃんと伝えることができれば、いくらでも逆転の余地はある。

(撮影:ヒラオカスタジオ)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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