利益倍増!LCC「ピーチ」はどうして強いのか 井上慎一CEOを直撃、「まだまだできる」
――段ボール製のチェックイン機や、機内食でナマズを出すなど、従来の航空会社と異なるユニークな取り組みも目立つ。
最初から段ボールで作ろうと思ったわけではなく、お客さんにとって便利で快適なものにしたかったので、スクリーンを大きくした。するとコストがかかる。総額でなんとか(予算に)収められないかとひねり出したのが段ボール。ナマズにしても、まず「ナマズを飛行機で食べられるのかい」という驚きがある。しかもそれが「うなぎの蒲焼味」になっている。
ほかにも、大阪の泉佐野市などでは、ふるさと納税をすると「ピーチポイント」(運賃や各種料金の支払いに使えるポイント)がもらえる。これはなかなかないイノベーションじゃないかな。実は市役所から出向してきた者のアイデア。自分の街を活性化するためにどうすればいいか、ピーチの社員として考えたらそうなった。
人材のダイバーシティ(多様性)も大事。運航にかかわる部門は航空会社の出身者が多いが、間接部門にはほとんどいない。外国籍の社員も増えてきた。慣習にとらわれずに事業をやるには多様性が強みになる。客室乗務員も韓国や台湾から採用を始めた。これからどんどん増やしていく。
なぜ客はピーチに乗るのか?
――競合他社よりもユニークな立ち位置を意識しているのか。
つねに新しいことをやっていく。コストがかかる方法を選んでいないか、もっと工夫できないかなど、自問自答を欠かさない。
そもそも空飛ぶ電車というモットー自体が新しかったと思う。私がよく言っているのは「気軽すぎる旅」。お客さんがぱっと思いついて乗る、という使い方も広がっている。地方の方が関西の病院に通院されていたり、ひと月に1回、北海道で下宿する大学生の息子の部屋を掃除しに行くお母さんがいたり、台北の女の子が沖縄の美容院に来たりする。
これまで飛行機を使わなかった新しい顧客層が、いまだに入ってきている。そしてすぐにリピーターになってくれる。国際線では外国人比率が年々増え、7割を超えた。昨年韓国でMARS(中東呼吸器症候群)が流行ったが、LCCの他社が影響を受ける中でわれわれの客足は変わらなかった。つまり安い運賃だけじゃない。何かの要因でうちが選ばれている。
――何かの要因とは?
ブランディングがあると思う。外国人のお客さんの半分は20~30代の男女で、台湾や韓国の人は「かわいい飛行機」だと見てくれている。最近増えているのはシニア層だ。精神的にすごく若い方々。親父バンドに熱中していたり、サーフィンにはまっている人。以前、どうやって航空券を予約しているのかと聞いたら「ネットに決まっているだろ」と叱られた(笑)
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