ライフネット、仰天の「新人」活用法 出口社長「株主総会を新卒に仕切らせる」

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選考フローでお気づきだろうが、ライフネット生命では会社説明会は開かない。その代わりに採用ホームページに豊富な情報を開示している。

株主総会の責任者は、新卒社員

――厳選採用した新入社員とはどんな人ですか? 活躍していますか?

今年6月24日(日)にマザーズ上場後,初めての株主総会を開いたが、運営の責任者は新卒1期生の女性だ。総会の開催日を株主が来やすい日曜日に決めたのも彼女の発案。総会は成功裏に終了した。

出口治明 ライフネット生命保険 代表取締役社長
1948年生まれ、京都大学卒。72年日本生命入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て退職後、東京大学総長室アドバイザー。2006年、三井物産、セブン&アイ・ホールディングスなどから出資を受け、ハーバード大学MBA修了の岩瀬大輔とともに生命保険準備会社ネットライフ企画を設立。08年、生命保険業免許を取得し、ライフネット生命保険 代表取締役社長に就任。

彼女はもともと理学部でめだかの研究をしていたが、顕微鏡を毎日のぞいていて将来、暮らしていけるのかと不安になり、大学院は情報系を選び、ライフネット生命に入社した。

もう一人の1期生は大学院で化学を専攻したが、修士修了に5年もかかった。なぜそんなにかかったのかというと、院進学後に無性に留学したくなったからだ。そしてさまざまな奨学金制度を調べ、ルノーの奨学金が最も倍率が低いことを発見し、フランス語を勉強してパリのソルボンヌ大学に留学した。インターンに行ったフランスの政府系化学メーカーからも誘われたが、ライフネット生命に決めてくれた。

2期生も男女1人ずつ。2人とも文系で学部卒。女性は中国人だ。3期生も個性的な男性で、ボクシングで国体2位になったそうだ。すでに大学の単位は取得済みであり、現在はほかのベンチャー企業でインターンとして社会人経験を積んでいる。 

――採用ホームページに掲示されている採用宣言は「社会はこんなに変わっているのに、新卒採用は変わらなくていいの?」と現在の新卒採用に批判的です。

学生がこれほど大学で勉強しない国は日本だけだ。読書量も日本の学生は年間100冊だが、アメリカの学生は400冊読むと言われている。

なぜこんなに勉強しないのか? その理由の1つが青田買いだと考えている。在学中の学生に就職活動を強い、勉強の時間を奪っている。大学の先生が「学生をゼミに返してください」と投稿したツイッターを見たことがあるが、先生がこんな悲鳴を上げる国は日本以外にない。現在の新卒採用の仕組みを当たり前だと考えている企業もおかしい。

早く秋入学などの改革が行われ、卒業してから成績証明書を持って就職活動するようになってほしい。それがグローバルでは当たり前の就職スタイルだ。

(撮影:今井 康一)

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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