ドコモ加藤前社長「ようやく脱獄できました」 苦難の連続だった4年間

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――20年以上ドコモのユーザーだが、1年以内に3度故障した。ドコモショップで「本社に聞いてくれ」と。本社に確認すると「ショップでやっている」と言われた。責任の所在がはっきりしない。また、「代替機の個人情報を消去してほしい」と言うと「そんなことはしていない。個人情報はそのままだ」と言われたが、問題ではないか。相談室長に「帰れ」とも言われ、「帰らないなら家族を呼ぶ」と言われた。心臓病の薬を飲もうとして水を飲もうとするとそれも拒まれた。

深々と頭を下げる加藤社長。NTT鵜浦博夫社長に「頭を下げすぎだ」と指摘されたこともある。丁寧な姿勢は最後まで変わらなかった

加藤社長:お詫び申し上げる。そういう対応が行われているとは驚きである。

大松澤清博常務ネットワーク部長:ご不快な経験をさせてしまい申し訳ございません。品質改善に日々取り組んでいる。スマホの普及当初に品質が不安定なことがあったが、その経験を踏まえてスキルやノウハウを教育に生かしている。診断ツールを配備するなどして症状に合わせて対応できるようにしている。ぜひご相談コーナー(株主総会の隣の特設会場)でお話をお聞かせください。

坂井副社長:私も驚いている。個人情報を必ず消すのが基本だし、閉店時間を過ぎても、店内では対応している。どの地域のどの店舗なのか、ぜひ相談コーナーで詳細をお聞かせ願いたい。

加藤社長:蛇足になるかもしれないが、3万8000人弱のスタッフはお叱りのお言葉の一方、お褒めの言葉もいただいている。閉店10分前に入っても、嫌な顔をせず1時間半対応いただいたなどの声だ。しかし、ご指摘のようなことがあったとすれば、努力も水泡に帰する。誠心誠意頑張りたい。相当時間も経ってきたので、発言はあと2人でお願いします。

「女性役員をもっと増やしていく」

――同一労働・同一賃金はどのように徹底されているのか。

紀伊肇常務人事部長:正社員も、正社員になる前の有期雇用者もモチベーションが大事なのできちんと対応していこうと思っている。ダイバーシティを経営の根幹に据えているので、その意味でも同一労働・同一賃金に取り組んでいる。

――女性の役員がいないが、女性が出世するのは難しいのか。

紀伊常務:今回遠藤氏が社外取締役に就任する。また、執行役員に女性が一人、今日から就任する。女性管理職の比率は直近で4%に引き上げられた。これからも増やしていきたい。

加藤社長:ほかに女性の組織長(部長)は2人。グループ会社には女性役員が5人。まだまだ少ないのは否めないが、人事育成システムを回しながら活躍する女性を増やしたい。

――ドコモは他社よりもしっかりしている会社。基本料金を下げたらもっとドコモユーザーが増えるのではないか。

阿佐見常:低廉化に向けた取り組みをしっかりやっている。

加藤社長:月額1700円で5分以内ならかけ放題の「カケホーダイライト」を導入している。これからも料金プランは工夫していきたい。一方で、すべてを支えるネットワークの構築は大事。ネットワークは生き物ですので、災害時を含めた対応の努力をしていき、当たり前に簡単に使える時代を目指していくのでご協力、ご鞭撻、ご理解をお願いしたい。(会場から大きな拍手)。

 ◇ ◇ ◇

この後、採決に移ろうとすると、マイクを介さずに意見を言い始めた株主がいた。加藤社長は「動議ですか?」と尋ね、しばらく話を聞いた後、「十分質問は承りましたから」と採決に移った。この株主の発言で唯一聞き取れたのは「これでは舛添都知事と同じですよ」という言葉で、会場からは笑い声も聞かれた。また、採決を終えて、加藤社長が「散会します」と告げると「君がいなくなるとさびしいな」と株主から声がかかった。

ちなみに、同日夜に行われた記者懇談会で、加藤社長は「ようやく『脱獄』できました」と切り出して笑いを誘ったが、同席した役員は「就任から3年目までの業績低迷に、加藤さんは相当心を痛めていた」と解説。苦難の連続だった4年間を終えた加藤社長の双肩は、心なしか軽そうだった。

 (撮影:大澤 誠)

山田 雄一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事