――20年以上ドコモのユーザーだが、1年以内に3度故障した。ドコモショップで「本社に聞いてくれ」と。本社に確認すると「ショップでやっている」と言われた。責任の所在がはっきりしない。また、「代替機の個人情報を消去してほしい」と言うと「そんなことはしていない。個人情報はそのままだ」と言われたが、問題ではないか。相談室長に「帰れ」とも言われ、「帰らないなら家族を呼ぶ」と言われた。心臓病の薬を飲もうとして水を飲もうとするとそれも拒まれた。
加藤社長:お詫び申し上げる。そういう対応が行われているとは驚きである。
大松澤清博常務ネットワーク部長:ご不快な経験をさせてしまい申し訳ございません。品質改善に日々取り組んでいる。スマホの普及当初に品質が不安定なことがあったが、その経験を踏まえてスキルやノウハウを教育に生かしている。診断ツールを配備するなどして症状に合わせて対応できるようにしている。ぜひご相談コーナー(株主総会の隣の特設会場)でお話をお聞かせください。
坂井副社長:私も驚いている。個人情報を必ず消すのが基本だし、閉店時間を過ぎても、店内では対応している。どの地域のどの店舗なのか、ぜひ相談コーナーで詳細をお聞かせ願いたい。
加藤社長:蛇足になるかもしれないが、3万8000人弱のスタッフはお叱りのお言葉の一方、お褒めの言葉もいただいている。閉店10分前に入っても、嫌な顔をせず1時間半対応いただいたなどの声だ。しかし、ご指摘のようなことがあったとすれば、努力も水泡に帰する。誠心誠意頑張りたい。相当時間も経ってきたので、発言はあと2人でお願いします。
「女性役員をもっと増やしていく」
――同一労働・同一賃金はどのように徹底されているのか。
紀伊肇常務人事部長:正社員も、正社員になる前の有期雇用者もモチベーションが大事なのできちんと対応していこうと思っている。ダイバーシティを経営の根幹に据えているので、その意味でも同一労働・同一賃金に取り組んでいる。
――女性の役員がいないが、女性が出世するのは難しいのか。
紀伊常務:今回遠藤氏が社外取締役に就任する。また、執行役員に女性が一人、今日から就任する。女性管理職の比率は直近で4%に引き上げられた。これからも増やしていきたい。
加藤社長:ほかに女性の組織長(部長)は2人。グループ会社には女性役員が5人。まだまだ少ないのは否めないが、人事育成システムを回しながら活躍する女性を増やしたい。
――ドコモは他社よりもしっかりしている会社。基本料金を下げたらもっとドコモユーザーが増えるのではないか。
阿佐見常務:低廉化に向けた取り組みをしっかりやっている。
加藤社長:月額1700円で5分以内ならかけ放題の「カケホーダイライト」を導入している。これからも料金プランは工夫していきたい。一方で、すべてを支えるネットワークの構築は大事。ネットワークは生き物ですので、災害時を含めた対応の努力をしていき、当たり前に簡単に使える時代を目指していくのでご協力、ご鞭撻、ご理解をお願いしたい。(会場から大きな拍手)。
◇ ◇ ◇
この後、採決に移ろうとすると、マイクを介さずに意見を言い始めた株主がいた。加藤社長は「動議ですか?」と尋ね、しばらく話を聞いた後、「十分質問は承りましたから」と採決に移った。この株主の発言で唯一聞き取れたのは「これでは舛添都知事と同じですよ」という言葉で、会場からは笑い声も聞かれた。また、採決を終えて、加藤社長が「散会します」と告げると「君がいなくなるとさびしいな」と株主から声がかかった。
ちなみに、同日夜に行われた記者懇談会で、加藤社長は「ようやく『脱獄』できました」と切り出して笑いを誘ったが、同席した役員は「就任から3年目までの業績低迷に、加藤さんは相当心を痛めていた」と解説。苦難の連続だった4年間を終えた加藤社長の双肩は、心なしか軽そうだった。
(撮影:大澤 誠)
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