アップルが明かしたiPhone進化計画の全貌

iPhone7に向けては依然としてナゾも

クイックタイプの場合、文脈を判断しながら過去の行動結果なども考慮して、より確からしい入力候補を表示する。文脈判断ではひとつのセンテンスにかぎらず、たとえばチャットでは複数の入力センテンスを遡って認識し、暗黙の了解となっている情報を異なる文から抽出することで、正しいと思われる入力候補を提案する。

このような動作はSiriにも盛り込まれており、従来よりもより深く考えられた反応をSiriが示すようになっているようだ。これにより、一連のSiriとのやりとりの文脈から、次にすべきアクションを予測し、より的確なアドバイスをエンドユーザーにもたらすことが可能になるだろう。

デモや訴求する機能はやや控え目だったが、最後にアップルは「プライバシーを守る」ことを重視するとコメントしている。AI的な振る舞いの機能を実装するには、クラウド側に大量の履歴情報を蓄積し、それらを元に予測を立てるほうがシンプルだが、ビッグデータの収集は時にプライバシー問題を引き起こす。

もちろん、端末操作のすべてがアップロードされないわけではない。

Siriでは音声認識処理そのもの、マップやNewsでは利用者の行動データとサービスを連動させることが、アプリの構造上必要不可欠だからだ。しかしいずれの場合も、個人を特定させるデータ通信は行っていないとアップルは説明する。

しかし、さらに一歩踏み込んでスマートフォンの使い勝手や機能性を上げようとすると、さらに多くのユーザーデータをアップロードしなければならなくなってくる。個々のユーザーのプライバシーを守りながら、大人数のユーザーの使用パターンを分析することで、iOS 10は絵文字の予測入力やSpotlightのリンク先入力予測、メモのLookup Hints(入力したメモに関する情報を示す機能)に利用される。

そこで、アップルはディファレンシャル・プライバシーという技術を導入した。これはかつてNetflixが視聴パターン分析と、その結果のサービスへの応用に用いた手法に近い。徹底的に個人につながる情報を排除したうえでサービス改善のために情報を収集する。しかし、その分析結果を利用する際には、個人の行動データをサーバに通知せず、サーバ上にあるしかるべきデータをのぞき見するように参照する。こうすることで、ビッグデータの活用とプライバシー保護を両立できるという。

筆者はセキュリティ技術の専門化ではないが、アップルの主張によると彼らの実装は、第三者である学術機関からも高く評価されているそうだ。

繰り返しになるが、WWDCはソフトウエア開発者向けのイベントである。ここで発表された機能は、ほとんどのiPhone(少なくとも前の年までに販売されていたiPhone)では、そのまま利用可能になる。一方、その年の秋に発表される新しいハードウエア向けに、発表されていない機能が隠されているのも通例だ。たとえば昨年の場合、タッチの強さに応じて動作が変化する「3Dタッチ」を用いた操作性や機能が、製品発表時まで明らかになっていなかった。

次世代iPhoneはプライバシー管理がカギに?

現在発表されている機能だけで、アップルがiPhoneに新たなイノベーションをもたらすとは考えにくい。しかし、CEOのティム・クック氏は厳しかった決算発表の後、次世代iPhoneについて「それなしには生きていけなくなり、想像もつかない新機能」を追加すると言及している。

iOS 10は多数の機能が、より深く掘り下げられている。たとえば写真閲覧機能では、アドバンスト・コンピュータ・ビジョンと名付ける機能が設けられた。写真内の顔を自動認識し、写真が撮影された場所や時間などさまざまな切り口で写真を探せるようになる。ここでもディープラーニングが用いられ、多面的にひとつの写真について分析されるため、必要な写真を素早く取り出せるようになる。

しかし、本当に「想像もつかない新機能」なのだとしたら、もっともっと新しいジャンルで端末内で完結するディープラーニング応用の機能が付与される可能性がある。アップルのポリシーによると、AI機能による分析結果はクラウドには蓄積されず、端末上でのみ扱われる。言い換えれば端末の性能に依存する。すなわち、この分野でプライバシーを確保しながらイノベーションをもたらすには、ハードウエアに何らかの工夫が必要になる。

いずれにせよ、次世代iPhoneに向けては、まだまだ多くの隠し球がありそうだ。

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