――物語の背景として、マーケットの世界を取り上げた理由は?
もともとの脚本がそうだったということだけど、財テクの情報番組じゃないと物語として成立しないということもあった。特に面白いと思ったのが、この映画に登場する人物の誰もが自分の価値を見いだせずにあがいているところ。自分に価値を見いだせないからこそ、お金や名声に価値を見いだそうとしている人たちがいる。そこがこの物語の興味深いところだった。
2008年にリーマンショックを経験しているし、そもそも1929年には株価大暴落による世界恐慌もあった。日本もそうだったと思うけど、バブルが起きてははじける歴史を繰り返してきた。その連鎖は、これからもわれわれ人類が体験していくことだと思うが、これまでと違うのは、やはりテクノロジーによって経済がスピーディーになったことだと思う。それによって扱う額が大きくなって、その分、リスクも高くなってきている。
金融システムは意図的に複雑になっている?
2008年の金融危機以降、マーケットの金融取引システムはさらに複雑化している。それは意図的に普通の人には分かりづらくしているのではと思うくらいに複雑なシステムになっている。ちゃんと規制があるという意見もあるけど、結局そのシステムを作っているのは、高度なシステム化による恩恵を享受できる人。まさに富を持つ数パーセントの人たちに向けて作られたのでは? という気持ちになってしまう。
――パナマ文書問題が世間を騒がせています。お金の流れが分かりづらくなっているという点ではタイムリーな映画なんじゃないでしょうか?
それに加えて、金融の世界が以前に比べてグローバルになっているともいえる。この映画に出てくるファンドマネジャーも、かつては時代の寵児と呼ばれながらも、今は顧客が満足するような収益をあげられなくなってきている。だからより大きなお金を稼ぐためにリスクを取っている。
それはすごく今日的なテーマだと思う。2008年以降、規制が強まったにもかかわらず、いや、強まったからこそ、より大きな収益を得られるところがどこなのか、世界中を血まなこになって探している人がいるのではと思う。
――これまでホームドラマ的な作品を監督されてきましたが、今回が予算的には一番多いのでは?
そう、この作品が今まででいちばん予算規模が大きな映画だった。もちろんハリウッドのスタジオ映画としては超大作というわけではなく、中規模程度の作品だと思うけど、500人のエキストラがいたり、SWATチームが建物の上にいたり、ヘリが上空を飛んでいたりとか――。そういった部分では考えなくてはならいことも多かったし、いろいろな問題に直面したけれども、映画作りそのものは、いかにしてキャラクターを魅力的に描くかということを大事にしてきた。その点についてはこれまで手掛けた作品とそれほど変わらなかった。
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