命をかける覚悟がなければ経営者になるな 松下幸之助が経営について考えていたこと

✎ 1〜 ✎ 45 ✎ 46 ✎ 47 ✎ 最新
拡大
縮小

経営者は、数人、数百人、数万人の社員とその家族の生活を、あるときには生命すら左右する存在である。だとすれば、「経営者は仕事に没頭し、人生から仕事を引いたらゼロになってもいい」というほどの覚悟と実践がなければならない。そしてまた、それだけの価値があるものなのだということを松下は体現し、経営のために命を落としても、それは本望であると考えていた。

そういうことでは身がもたないという人は、およそ経営者になるべきではない。ひとつの会社のなかで全員がそう考えるべきだとは言わない。しかし、少なくとも会社の最高の指導者になった人たちには、その覚悟がいる。他の社員と同じように、遊びに行きます、休みもとります、ということではどうにもならない。

組織の最高指導者ぐらいは先憂後楽の心掛けが必要

「先憂後楽(せんゆうこうらく)という言葉があるやろ。せめて一つの組織の最高指導者ぐらいは、先憂後楽の心掛けで、その会社に命をかける思いがなければ、経営はうまくいかんね。社員と同じように、遊びとか休みとか言っておって、なおかつ経営が成功するなどということはありえないことや。経営というのはそんな簡単なものではないわ」

およそ経営者たる者は、「人より先に憂い、人よりも後に楽しむ」ということでなければならない。人が遊んでいても自分は常に働いている。遊んでいるようでも頭は常に働いている。先憂の志があればそうなるものである。先憂を広義に解釈すれば、発意ということにもなる。誰よりも先に発意し、案ずるものを持たなければいけない。

ある講演では次のように話した。

「自分はこの仕事に命をかけてやっているのかどうかと、これまで困難な問題に出くわすたびに自問自答してきました。そうすると、非常に煩悶(はんもん)の多いときに感じることは、命をかけるようなところがどうもなかったように思われるのです。それで、心を入れかえてその困難に向かっていきました。

そうすると、そこに勇気がわき、困難も困難とならず、新しい創意工夫も次つぎと起こってくるのです。そういう体験をたくさん持っています」

次ページ部下のために死ぬ覚悟
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT